「何か、おかしい…」
高知医療センターが開院して2カ月ほどたったある日。診療報酬の請求書のコピーをチェックしていた同センターの大脇嶺副院長の顔色が変わった。
1件で車1台分
診療報酬は「診察」「注射」「手術」など医師らが行う医療行為や使われた薬代などの対価として後日、医療保険から支払われる。このため病院は、一連の医療行為を過不足なく記した請求書を作成しなければいけない。
大脇副院長はその請求書に不備を見つけ、「請求漏れ」があることに気付いた。
心電図と超音波検査を同時に行った場合に片方の請求が漏れていたり、他の病院から持ち込まれたエックス線写真を医療センターでチェックした行為が請求されていなかったケースもあった。
請求漏れがあれば、医療費の自己負担分を支払い済みの患者にもあらためて不足分を払ってもらわなければならず、迷惑を掛ける。「患者が主人公」を理念に掲げる医療センターにとっては、それだけでもあってはならないミスだが、実際のところ、再請求した金額を正確に把握することすらできていないのが実態だった。
さらに、医療保険からの支払いの際に「不備がある」として保険機関から請求書の再提出を求められる返戻率も、病院統合直前の旧高知中央病院では月に1―2%だったのが、医療センターでは3―6%(今年3月から8月まで)で推移している。
院内には「医療内容が高度になった分だけ、請求事務も複雑になった」との声もあるが、旧高知市民病院長だった大脇副院長は自ら請求書もチェックしていただけに、こうしたミスは病院の収支に直結する問題と受け止めた。
心電図検査の診療報酬で1500円、エックス線のチェックは400円と比較的小さな額だが「頻度は高く、請求漏れはかなりの額になる」。さらにそれが心臓のペースメーカーであれば「1件でざっと200万円、車1台分に相当する」という。
SPCの役割
請求漏れの原因はどこにあるのか―。電子カルテの扱いに医師が不慣れで、カルテへの記載漏れが一因とする見方や、電子カルテのシステム上の問題を挙げる声もある。
結局は、開院直後の混乱などさまざまな要因が積み重なって請求漏れが起きたのだろうが、それをチェックし水際で食い止めるのが、医療事務を担う特定目的会社(SPC)の役割だ。
県外の病院で事務局長をしていたSPC幹部は「医事(医療事務)は病院運営の基本中の基本。そこにミスがあった。大変申し訳ない」と反省。医療事務の人員を入れ替えるなど態勢を強化した。
一方、大脇副院長も「医師でないと発見できない漏れもある」とし、循環器の医師全員で月に一回は請求書のチェックを行っている。が、そうした取り組みが、院内のすべての診療科に広がっているわけではない。ミス防止へSPCと病院企業団、双方に早急な対応が求められている。
【写真説明】患者が診療費を精算する自動支払機。本来ならここで支払いが完了するはずだが…(高知医療センター)
診療報酬 医療機関の診療行為に対して医療保険から支払われる報酬。診療を受けた患者は医療費の1―3割を支払うが、残りは医療機関側が健康保険組合など医療保険の支払い機関に診療報酬明細書(レセプト)を提出して請求する。レセプトの提出後や提出前に請求漏れに気付けば、医療機関は漏れた額の患者負担分を患者に追加請求することになる。
=2005年12月5日付・朝刊
|