県・高知市病院企業団が特定目的会社(SPC)に寄せた期待は過剰なものだったのか。高知医療センターへのPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)事業導入にかかわった人物にこの疑問をぶつけてみた。
2つの病院
「滑り出しはうまくいってるじゃない」
厚生労働省の研究機関、国立保健医療科学院(埼玉県)の小山秀夫経営科学部長は開口一番、問題はないとばかりにそう言った。
小山部長は、医療センターがPFI事業に基づく業者選定を行った際、プロポーザル審査委員会の審査委員長を務めた病院経営のエキスパート。その専門家がまず着眼したのは、医療センターが旧県立中央と高知市立市民、自治体病院の統合病院であるという事実だった。
「異質な2つの病院が1つになるにはすごいエネルギーが要る」という小山部長。医療関係者の間では当初、複数の大学出身の医師らで構成する医療センターは機能しないのでは…とささやかれていたことも口にした。
それが3月の開院以降は、「救命救急センターや周産期母子医療センターなど地域に約束した医療機能はちゃんと果たしている」とみる。では、SPCが調達を担った材料費が予算額を8億円以上も超過し、医業収益に対する割合も契約時の「23・4%」を大幅に上回る見通しをどう受け止めているのか。
小山部長は、メモ用紙に鉛筆でシャシャッと図を書きながら、こう説明した。
資金ショート
入院患者を受け入れた場合、おおむね患者の手術代と入院費が病院の収入になる。入院費が1日2万円なら、20日の入院で40万円。手術代が40万円なら病院側の収入は80万円となる。手術代のほとんどは手術器具などの材料購入に充てられるといい、収入の5割を材料関係で占めることも。
これに加え、最近は医療技術の進歩でリハビリを早めに始められるようになり、入院初日の手術も増えるなど入院期間が短縮。20日入院していたのが10日に半減するケースもあり、収入に占める材料費の比率が入院費より高くなる傾向が強いという。
国の医療費抑制策も背景にあり、医療センターの当初計画では入退院の頻度である平均在院日数を17日としていたのが、8月は13日に。入院医療に重点を置く方針も定着し、材料費が比較的掛からない外来患者が予想より4割程度少なくなっている。
こうしたことから小山部長は、「もともと23・4%なんて無理。数年前のデータで出した数字だろう」と指摘。目標値を設定したSPCと、それを基に契約した県・高知市病院組合(現病院企業団)の見通しに甘さがあったとすれば、材料費が目標値より高くなった理屈は成り立つ。
だが、医療センターは、材料費などの経費をこのまま圧縮できなければ、2008年度には資金ショートを起こすという試算も出している。想定外では済まされない。いずれにしても病院企業団がどこまで経費を削減できるか。その鍵はSPCが握っている。
【写真説明】心臓バイパス手術のために準備された手術材料一式。高度な医療を行うには一度に多額の材料費が掛かる(高知医療センター)
平均在院日数 病院の入院治療機能をみる指標。国の診療報酬制度ではこの日数が短いほど1日当たりの入院費が高くなるように設定されており、病院の収益にも影響する。厚生労働省の調査によると、本県の一般病床(療養病床除く)の在院日数は全国で最長だったが、ここ数年は減少傾向が続き、平成12年に28・8日(全国平均24・8日)だったのが、16年には22・9日(同20・2日)となっている。
=2005年12月3日付・朝刊
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