目標値を8億円余り上回る材料費。高知医療センター初年度の収支見通しに目を凝らしたのは議会だけではない。同センターを運営する県・高知市病院企業団側もまた、一様に顔をこわばらせた。
企業団は開院前、「人件費や材料費をいかに削ることができるかが病院経営の大きな要素」と位置付けていた。それだけ経営面のパートナーである特定目的会社(SPC)への期待は大きかった。
「官」の限界
施設整備だけではなく病院運営自体にも効果がある―。そう信じて県と高知市が統合病院に導入したPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)事業だが、同センターの長瀬順一事務局長はこう漏らした。
「開院から半年余りでどうこう言う時期ではないが、『民』への幻想があったのかもしれない…」
県職員の長瀬事務局長は1996年度から6年間、県立病院の経営健全化に携わり、人件費や材料費を圧縮して業務の外部委託を進めてきた。その際に感じたのは、100を超えるさまざまな病院の周辺業務を一つ一つ個別の業者と単年度契約しなければならない「官」の手法の限界だった。
単年度契約では業者に「安定」を保証できず、それが業者間の効率的な業務分担も難しくする。「サービスの質を落とさず経費削減を」と二兎(にと)を追っても、満足がいく成果は得られにくい。
「県立病院の経営健全化は、ある程度のレベルまでは押し上げられたと思う。が、それ以上にするには『何か』が足りない」
そんな思いを抱えていた長瀬事務局長は、医療センターの立ち上げに加わる中で、足りなかった「何か」をPFI事業に求めた。
30年契約
民間資金や能力を生かし新しい公共サービスを展開するPFI事業は、その推進へ国が1999年に法制化した。
公共建築物を建設する場合なら、建物の基礎はどこに発注し、資材はどの業者に納入させるか。それらをすべて「官」が手放して「民」に任せ、民間のノウハウを活用する。そうすれば公平性や競争性を担保するあまりコスト高になりがちな「官」の手法と違って、大幅な事業費の抑制が図れるのがメリットとされている。
加えて高知医療センターの場合は、全国初の“運営PFI”も導入。最大30年という「長期契約」を結ぶことで安定的な経営環境を業者に与え、経費削減への「やる気」や努力を促すことができる。
当初、県や高知市の担当者はそう考えた。ところが…。
企業団によると、同センターの施設整備ではPFI導入で「官」が手掛けるより約50億円のコストダウンが図れたという。しかし、運営面ではまだ目に見える効果が上がってこない。
「SPCに過度の期待をしてしまったのか…」「結果を出す難しさを再認識した」。勝手の違うパートナー、誤算とも言える現実に、複数の企業団幹部の表情には焦燥の色が浮かんでいた。
【写真説明】診療材料の保管庫。保管されている数は3000種類を超える(高知医療センター)
PFI事業契約 2002年に県・高知市病院組合(現病院企業団)が特定目的会社(SPC)の「高知医療ピーエフアイ」と30年契約で締結。業務の発注方法は「官」が指示を出す従来の仕様発注ではなく、要求するサービスの水準や質に、「民」が応える性能発注。水準に達しているかを確かめるため患者へのアンケートや調査などを随時行い、達していなければ支払いが減額される。
=2005年12月2日付・朝刊
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