「高知市内の病院の外来や入院病棟に患者さんがあふれ返っている」。今年の春先、そんな話をよく耳にした。
3月1日に開院した高知医療センター。その前身である旧県立中央病院(400床)と旧高知市立市民病院(450床)は開院に備え、外来・入院患者に地域の医療機関に転院してもらう逆紹介を積極的に推進した。
両病院は2月18日で外来診療を休止。26日には入院患者を医療センターに搬送したが、その時点で入院患者は両病院合わせてわずか約80人。医療センターも開院当初は混乱を避けるため、外来予約患者数をセーブした。
超多忙な3月
一方、高知市内のある民間総合病院では、1、2月の外来患者数がそれぞれ1万8000人弱だったのに対し、3月は2000人以上も増加する現象が起きた。
その病院を運営する医療法人理事長は「(中央・市民の元患者とみられる)患者さんが外来にかなり回ってきて、超多忙だった。入院も一時は満床に近い状態にまでなった」と振り返る。
同市内の別の民間病院でも、3月は外来患者数が通常の月に比べ1000人以上増加。その病院の事務部長は「インフルエンザが流行した時季と重なるので、医療センターとの因果関係は薄い」としながらも、「医療センターの開院前後にかけて、中央・市民からの紹介状を持った患者数が増えたのは事実」と話す。
開院から5カ月。医療センターの延べ外来患者数は累計で6万4000人を突破し、7月は1日平均が約700人だった。一方、入院患者数は7月末時点で約480人(有効病床数600床)となった。
中央・市民の旧病院時代、外来患者数は合わせて1日平均1300―1400人、病床数は850床。現在と比べると、それぞれ約600―700人、250床のマイナス。その分の患者は一体、どこへ行ったのか?
呪縛からの解放
市中心部から中央・市民という計800床クラスの大病院が抜けた“穴”を一体、どこが埋めたのか―。「単純に考えて、市中心部などにある他の医療機関がカバーしたということでしょうね」。市内の医療法人幹部は指摘する。
旧中央・市民の患者の中には、“かかりつけ医”的に両病院にかかっていた患者も多かったとみられ、この幹部は「(市中心部の医療機関などに流れた中央・市民の元患者は)もともと、医療センターのある池までわざわざ通院しないといけないような病態・症状の患者さんではなかったのではないか」とも。
市周辺部である池への統合移転は、統合論議の中で患者や住民らが掲げた大きな反対理由でもあった。
その「中心部からの物理的・精神的遠さ」が結果的に、それまで“かかりつけ医”的に中央、市民にかかっていた患者を地域にある相応の医療機関に向かわすと同時に、医療センターを“げた履き医療の呪縛(じゅばく)”から解き放ち、紹介外来制の高度・急性期病院に特化する足掛かりとなったのではないか―。それが複数の医療機関関係者の見方だ。
医療センターの開院前後にかけて起きた現象はある意味、同じ医療圏にある医療機関同士が相関関係にあることを象徴しているといえる。
そうした“持ちつ持たれつ”の関係にある医療機関同士が互いに機能分担しながら連携するネットワークをシステム化する役割を与えられているのが「地域医療支援病院」制度。医療センターもその指定を目指している。
医療センターが名実ともに紹介外来制による高度・急性期の病院として特化し、「地域医療支援病院」の指定を受けるためには、幾つかの条件をクリアしなければならない。
【写真説明】高知医療センター開院に向け、中央、市民の両病院は外来・入院の診療機能を縮小した(今年2月、中央病院)
(統合病院取材班)
=2005年8月11日付・朝刊
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