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 21 救急医療 上
 二度と行かない
抗がん剤を調剤する。無菌製剤室で薬剤師が薬量をチェックしながら行う(高知医療センター)  県内2カ所目となる救命救急センターを備える高知医療センター。救命センターの直接的な機能は文字通り、「患者の命を救うこと」だが、ここでも機能分担と連携がなければ、その機能を十分に発揮することができない。

 4月初め。医療センター取材班に一通の電子メールが届いた。そこには、医療センターの救命センターに対する憤りがつづられていた。

 県中部に住む30代の母親。3月21日夜、子どもが急に発熱。県立中央病院にかかっていたこともあり、医療センターに電話した。

 ところが、職員は「ただ今、小児科の医師はおりません」とそっけない返事。救急医療情報センターに電話すると「9時から医療センターが輪番病院」と教えられた。確かに医療センターに電話した時は9時になっていなかったが、「それならそれで『うちは9時からです』と一言教えてくれればいいのに…」。職員の対応に不満を覚えた。

 9時すぎ、医療センターに到着。待合室には2組の家族しかいなかったが、いくら待っても呼び出しがない。そのうちに患者は次々に増え、待合室は満杯の状態になった。

 子どもの熱も40度を超え、2時間待った末に受けられた診察はわずか5分。さらに会計まで1時間半、薬をもらうのに30分。結局、病院を後にしたのは午前1時を回っていたという。

 「急患なのに長時間待たされ、職員の対応も親身さが感じられない。もう急患では医療センターに行きたくない」と憤る。

 1日で82件対応

 もし自分や自分の家族がこんな目に遭ったら…。怒りを感じるのは当然だろう。

 ちなみに、この女性が医療センターを訪れた日は3連休の最終日。この日の午前8時半から翌22日の午前8時半までの間に受け入れた救急患者は82件。月間最多患者数を記録した日だった。

 そのうち、いわゆる夜間(午後5時半から翌午前8時半まで)が46件と半数以上を占め、その間に救急車7件、ヘリコプターによる搬送が2件あった。つまりこの夜、救命センターは次々に押し寄せる患者で“火の車”の状態。待合室と壁で仕切られた処置室では、医師や看護師らの必死の救命処置が繰り広げられていた。

 救命センターでは基本的に、救急車などで運ばれてくる重症患者を診るため、救急車を呼ぶほどではない、いわゆる“時間外診療”的な患者も含めて大勢が殺到すれば、より重症な患者を先に治療せざるを得ないケース(トリアージ)も生じてくる。

 「“時間外”の患者さんもお待たせしないよう、病院として待ち時間の短縮に努めている。特に開院当初は事務職も含めたスタッフが不慣れなこともあり、ぎこちない対応が目に付いた」と福田充宏(あつひろ)救命救急センター長。現在は、受付で事前に「重症患者さんが来られていますので、お待ちいただくことになりますが、ご了承ください」などと説明し、理解を得るよう努めているという。

 乏しい受け皿

 救命センターでは7月末までに5500人以上の救急患者に対応したが、うち7割が自家用車など“自力”で来院した患者。その多くが救急車を呼ぶ必要のない初期救急患者と推測される。

 県内では高知市に休日夜間急患センター、平日夜間小児急患センターがあるものの、郡部に行くほど初期救急の患者の“受け皿”が乏しくなるのが実情。その上、患者も一定規模以上の救急病院を受診したがる傾向にある。

 以前から指摘されてきたこれらの課題が案の定、医療センターでも浮き彫りになった。各医療機関が機能分担と連携を進め、救命センターがその機能を発揮するためには、県内医療全体の課題として救急の基盤整備に取り組むとともに、患者側の理解もまた求められる。

 【写真説明】高知医療センターの救命救急センター。救急車などで搬送されてきた重症患者の“命を救う”のがその直接的な役目だ(高知市池)

(統合病院取材班)
=2005年8月7日付・朝刊



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