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 17 心臓手術 上
 生きる―90歳の決断
見舞いに来たひ孫らに囲まれ、精いっぱいの笑顔を見せる西山實さん=中央(高知市の岡村病院)  「ありゃあ、先生も偉かった。治す自信がなかったら手術もするかよ」

 高知市入明町の岡村病院(岡村高雄院長)。病室のベッドで、ひ孫ら家族に囲まれ、回復を喜ぶ西山實(みのる)さん(90)=安芸郡馬路村馬路=の姿があった。

 長年、ユズとコメ作りに携わってきた西山さん。肌に深く刻まれた皺(しわ)。ゴツゴツとして大きな手はまさしく農民のそれだ。

 西山さんは6月下旬、高知医療センター(同市池)で、90歳という超高齢ながら人工心肺を使った心臓手術を受けた。その後、今の病院に逆紹介され、リハビリに励む毎日。妻や長男夫婦の待つ馬路の自宅に帰り、また以前のように農業にいそしむ日を夢見て…。

 血がどんどん逆流

 「息が苦しい…」

 高知市内にいる二男の稀雄さん(63)宅に、西山さんから電話があったのは5月中旬のこと。稀雄さんの妻、有利さん(53)はその声にただならぬものを感じ取っていた。

 同市神田の「おがわハートクリニック」(小川聡院長)。西山さんとともに心臓のエコー(超音波)画像を見た有利さんはがくぜんとした。「血がどんどん逆流している…」

 小川院長は延べ12年間、医療センターに統合される前の旧高知市立市民病院に勤務した経験がある。

 「僧帽弁閉鎖不全症による心不全。もはや薬などの内科的治療では限界にあり、外科的治療を考える必要がある」―そう判断した小川院長は医療センターに連絡。外来受診の予約を取り付けた。

 “溺れる”ように

 5日後、同クリニックからの紹介状を持って医療センターにやって来た西山さんを診察しながら、心臓血管外科の岡部学・主任科長(53)はある可能性を探っていた。

 西山さんは肺水腫を起こしていた。心臓で血液が逆流、肺に血液がたまり、行き場がなくなった血液から肺胞に水分などがしみ出す―つまり“溺(おぼ)れている”のと同じ状態。心不全としては末期症状だった。

 ただ、手術となれば人工心肺を使い、心臓を停止させて行うことになる。しかも90歳という超高齢。全国的にも症例は少ない…。だが、岡部医師は診察を進めるうちに「西山さんの体は手術に耐えうる」という手応えを感じ取った。

 農業などで普段から体を動かしているなら、心臓以外の臓器の状態はいいはずだ。何より、西山さん本人に「元気になってまた農業がしたい」という強い希望がある。

 西山さんはその日のうちに入院。循環器病センターを中心とするチーム医療が始まった。心臓血管外科と循環器科が連携し、看護師や栄養局などのサポートも受けながら心不全をコントロール。症状が落ち着いたところで心臓や他の臓器をチェックし、手術に備えた。

 お任せします

 約1カ月後の6月18日、主治医を任された半田武巳医師(33)=心臓血管外科=が本人と家族を前に、手術の説明をしていた。半田医師はこの4月に医療センターに赴任したばかりだ。

 技術が進歩したとはいえ、手術には一定のリスクが伴う。90歳という年齢であれば、そのリスクは数倍にも跳ね上がる―。それを聞いた家族は顔色を失い、手術をやめることすら頭をよぎった。

 その時、傍らでじっと考え込んでいた西山さんが口を開いた。

 「先生に任せてみよう」

 そう言って半田医師の手を握り、2日後の手術が決まった。

 【写真説明】見舞いに来たひ孫らに囲まれ、精いっぱいの笑顔を見せる西山實さん=中央(高知市の岡村病院)

(統合病院取材班)
=2005年8月2日付・朝刊



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