「地域医療における連携と機能分担の促進」
県保健医療計画が掲げる政策目標の中に、こんな一項がある。同じ文言が最初に登場したのは、もう十数年前の1988年。本県では病院同士の連携がうまく進まず、機能分担もなされずにいる。そういうことになる。
新設される高知医療センターは、県内随一の基幹病院としてその目標達成へのけん引役を担う。目指すのは、県内のどの地域の住民も安心し、信頼を寄せられる医療ネットワークの構築―。
【写真説明】会計を済ませ、病院を後に(県・高知市病院組合立高知市民病院)
改革のチャンス
高知の医療の特異さ、いびつさを示す数字はたくさんある。例えば、人口10万人当たりの医師数は全国2位(2002年)。しかし、全国でも突出した過剰な病床数を抱え、1病床当たりの医師数に換算すると、途端に全国最低ランクに転落してしまう。
県民には大病院志向が根強い。患者が一極集中する高知市内の大病院では、「3時間待ち3分診療」もそうオーバーな表現ではない。“げた履き”で通える病院として親しまれてきた高知市民病院もかつて、薬をもらうだけで半日待ち、検査は2週間待ち、ということがざらだった。
「市民」の幹部たちは久しく、“げた履き”から高度な医療までを幅広くカバーすることに限界を感じていた。より高度な医療を担っていくには“げた履き”を抑える必要性があったが、「そこは市立病院。市民病院で治療を受けたいと望む市民の思いには応えなければならない」とのジレンマも抱えていた。
しかし、同病院は統合に備えた昨夏から通院、入院患者にそれぞれの地域の医療機関に転院してもらう“逆紹介”を積極的に進めるようになった。逆紹介は、地域の開業医らがいわゆる「大病院」に患者を紹介するのとは逆に、大病院の方から開業医らに患者を送ることを指す。
逆紹介を告げられた患者の中には「7年間も通って培われた先生との信頼があるのに…。閉院までは来たい」と寂しげに肩を落とす人もいる。同病院の大脇嶺院長はそうした心情に理解を寄せつつ、「医療の仕組みを変えるチャンスだと思った」と話す。
外来患者の抑制
入院や専門医療、高度医療を扱う病院が、町の診療所などでも十分対応できる風邪などの外来患者を抑制する。そうすることで、病院側も本来の専門診療や手術などに時間と労力を費やせる。高度医療が必要な患者が本当に必要なときにその医療を受けられる。そういう環境を整えることが、ひいては県民全体の利益につながる―。
これが大方の医療関係者に共通する考え方だ。
CTやMRIなどの高額機材は一部の病院が持ち、効率的に減価償却する▽高度な技術を持つ専門医に特定の症例を集中させ、専門技術をより向上させる―。高知医療センターのトップらは今、それらの実現のために県内各地の医師会などと幾つかのプランを煮詰めている。
今後、加速する「大病院」と地域の病院・診療所との機能分担、医療資源の効率的活用。患者は「大病院志向」からの脱皮が迫られている…。
では、あなたの心臓、誰が診る?
(統合病院取材班) =2005年2月9日付・朝刊
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