県・高知市病院組合は平成14年12月、オリックスを代表企業とするグループが設立した特定目的会社(SPC)「高知医療ピーエフアイ」(西名弘明代表)とPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)事業の契約を結ぶ。
このときからSPCと病院組合は「医業一体」を目指す不離の関係となった。
【写真説明】県市自治体病院の統合と病院PFI事業の「全国初」を冠する高知医療センターの起工式(14年12月8日、高知市池)
マネジメント
病院組合が目指すのは開院後の運用に民間のノウハウを生かす「高知版PFI」。それだけにSPC側が提供するサービスの善しあしが、新病院の成否に影響する。しかもSPCとの事業契約は行政が経験したことのない30年間という長期にわたり、契約金額は2131億円に上る。
具体的な業務の分担では、病院組合が医療行為を提供。SPCは施設の建設、維持管理、消毒滅菌、清掃、洗濯、医療機器の保守点検などのほか、受け付け業務や食事の提供、さらには患者搬送など患者と接するサービスも受け持つ。
開院を目前にした今、SPCの西名代表は「官が民の手法を導入する壮大な挑戦。本当のPFI事業はこれから始まる。汗を流し患者の立場に立ったサービスを提供する」と強調する。
契約統括責任者としてSPC構成企業との調整役に徹したオリックス不動産事業本部の森川悦明副部長(当時)は、資金調達や施設を整備するだけのPFIとは異なる「運営PFI」の鍵を「個別にサービスを提供する企業との調整を図るマネジメント。その能力をSPCが高められるかどうかだ」とみる。
病院組合幹部も「私たちは民のノウハウを学び、SPCには医療を理解してもらう。一つの経営体にSPCの職員には病院のスタッフとして動いてもらいたい」と期待。SPCが参画した経営企画協議会で今後の運営課題を詰める考えだ。
社会実験
PFIの導入とともに、病院組合には解決しなければならない内部課題が残っていた。
病院組合は経営強化を図るため、責任体制があいまいになりやすい一部事務組合から公営企業法の全部適用を受ける「企業団」への移行を決め、開院後の具体的な運営体制の協議を重ねた。
しかし瀬戸山元一理事(院長予定者)の就任以来引きずっていた院長の権限と責任については結論が出ず、16年4月の橋本大二郎知事と岡崎誠也高知市長のトップ会談にもつれ込んだ。
選択肢は二つあった。院長に全権を委ねる一元化か、企業団トップと院長で権限を分担し合う二元化か―。
当初、経営権限の一本化を主張していた橋本知事は「企業長、院長がけん制し合うのではなく連携する形なら…」と最終的に市側が推した二元化に同意。12月には一連の統合作業にかかわり、県市医師会にもパイプがある吉岡諄一副管理者を企業長予定者に登用することで決着した。
◇
橋本知事は県と中核市の自治体病院統合、PFI事業の二つの「全国初」を冠する新病院を、「失敗が許されない“社会実験”」と位置付ける。
県市が統合を描き始めてから十余年に及んだ高知医療センターは、本県医療の構造改革と自治体病院の経営健全化という使命を抱え、間もなく始動する。
(統合病院取材班 政治部・岡林直裕 学芸部・小川一路 社会部・宮崎順一) =2005年2月7日付・朝刊
=第1部おわり=
|