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予土線で行こう!
7. 孫のような生徒たち
2005年10月31日付朝刊
四万十高校の生徒たちでにぎわうJR大正駅。見慣れた「駅のおばちゃん」は5月いっぱいで引退した(大正町田野々)  山あいの町に似合う、地場の杉板で外装された駅舎は、ひっそりと静まり返っていた。幡多郡大正町田野々のJR大正駅。売店だったスペースにはシャッターが下り、「長年のご愛顧」に感謝する張り紙があった。

 “店主”の山脇幸枝さん(74)=同町大奈路=は、今年5月いっぱいで30年間の切符販売の仕事に幕を下ろし、隣のバス会社に引き継いだ。

      ◇

 「生涯現役のつもりやったけど、いろいろあって…」

 ここ3年半の間で、長年連れ添う夫が次々と病魔に襲われ、自身も手のしびれで手術したりもした。

 30年の変遷は著しい。「最近の10年はほとんどボランティア。お金のことだけ考えたら、とうの昔にやめちょった」が、旺盛なボランティア精神で「町の玄関」を守り続けてきた。

 四万十高校(旧大正高校)の生徒との交流が、一番の思い出だ。

 予土線の下り便は、窪川方面から通学する生徒にとってはとても不便なダイヤ。早朝7時前、登校時間よりずっと早く駅に着いて時間を持て余す。

 「50円ばあでイカの足を売りよったら、毎日買う子がおってねえ。お母さんはまだ寝よって食べらしてもろうてないと。それがどうなりゃ、イカじゃいかんけん言うて、パンを焼いて食べらして」

 そんなふうに絶えず触れ合っていたはずの生徒たちだが、残念ながら悪さの過ぎる子もいた。いつもかわいがっていた3人組の万引を見つけた時は、ショックも大きかった。

 「あたしをだませるがかね、としかりつけると、シュンとして何もよう言わん。きょう限りそんな根性を捨てるやったら、親にも学校にも言わん、約束守るやったら、1回はこらえちゃお、と」

 定期を改ざんして不正乗車した女生徒。これは自分の裁量で見逃すわけにはいかなかった。規則に照らして請求額を計算すれば、ざっと10万円。「親には言わないで、と言われてねえ。でも、駅に報告せんことには。そしたらお金もいる…」

 親しい先生に相談すると、「『まじめな子やけんど、お母さんが病気で』と。運動クラブの顧問をしよったええ先生でねえ、『自分が払うから』と内証でだいぶん援助したようです」

 そんな迷惑をかけた少年、少女ほど律義なものだ。大人になっても、懐かしそうにひょっこり姿を見せたりする。「『今、高知で車の塗装をやりよう』とか、『あの時は黙っていてくれて、本当にありがとう』とか。孫のように思えてくるね」

      ◇

 かつては学校から外に出ても、町のあちこちに“先生”がいた。しかったり、褒めたり、わが子と変わらぬ愛情を地域の子供たちに注いだ大人たち。そんなおばちゃんの一人が、駅からいなくなってしまった。

 【写真説明】四万十高校の生徒たちでにぎわうJR大正駅。見慣れた「駅のおばちゃん」は5月いっぱいで引退した(大正町田野々)

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