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夜なべ談議詳報 食の台地の魅力発信
高岡郡窪川町で9日から5日間にわたり開催した「第12回移動高知新聞 ふれあい高新in窪川」は、“食の台地”の魅力を多角度から発信。12日夜には、読者代表と岩井寿夫社長ら本社幹部がひざを交えて意見交換する恒例の「夜なべ談議」を町内の料理店で開き、同町の基幹産業である農業や幡多郡大正町、十和村との合併を来春に控えた同町の在り方、将来像、郷土紙への要望などについて、約2時間にわたり懇談した。その内容を詳報する。
【写真説明】仁井田米の収穫を終えた田園地帯。まちづくりでも基幹産業の農業の振興が鍵を握る(窪川町与津地)
地元出席者(50音順)
川上 哲男さん(44) 窪川中学校PTA会長
川村 英子さん(56) 仁井田地区総代会長
秦泉寺智早さん(43) 窪川町観光協会事務員
古谷 幹夫さん(52) 四万十農協営農推進課長
村上 智之さん(37) Iターン農業者
まちづくり 農業に夢と誇り 新町へ意識改革も
将来に向けたまちづくりをどうするか―。出席した読者代表は、来年3月に誕生する四万十町の姿も見据えながら、観光や教育、農業を軸にした地域振興の在り方について持論を展開した。
地域の元気な話題を掘り起こす「くぼかわ新聞」の取材・編集に携わっている秦泉寺さんは、「窪川には桂浜ほどの目玉がなく、四万十川はあるのに、観光客には河口のイメージが強い。やっぱり人や生活の魅力を堪能してもらって何度も来てもらえる関係をつくるのが、この地域の観光の方向性じゃないかな」と提案。「地元の良さを再発見して“窪川マニア”をいっぱいつくりたい。緩やかなファンより濃いマニアを」と今後の取り組みにも意欲を見せた。
「住民が自分の命を自分で守ろうという意識付けが必要。人のつながりが地域の住民力になり、防災力に変わっていくはず」と強調したのは、地区総代として自主防災組織の立ち上げにも汗をかく川村さん。南海地震対策など本紙の報道を参考にしながら、住民の意識改革を促しているという。
一方、合併後については「面積は淡路島よりちょっと広い大きな町になり、集落の数も200から260余りに増えるのでいろんな組織づくりが大変。大正、十和の人たちと交流を深めていきたい」。さらに「“合併バブル”にならないよう、合併特例債がどう使われていくかもしっかり見極めていく」とも。
これを受けて川上さんは「四万十町は四万十市とごっちゃになりそうだけど、市を追い越すぐらい窪川・大正・十和のインパクトを強くしたい。そのためには町自体が元気にならないと」。人づくりがまちづくりにつながるとの考えから、「子どもたちに地域をよく知ってもらって、将来郷里のために何かしたいという思いを育てる教育が必要」と熱く語った。
仁井田米など豊かな食材を抱える窪川。まちづくりの上でも基幹産業である農業の振興が鍵を握るだけに、出席者の話題も自然とそこに集中した。
兵庫県西宮市出身の村上さんは8年前にIターン。窪川に来て一番驚いたのは「同世代の若者が一次産業で頑張っていること」だったという。「窪川牛」の生産者団体である「ビーフキャトル」を例に挙げ、「若い人たちはそれぞれ『後継者』という意識はなくて、極端な人は『父親さえおらんかったらもっと大きくやれるのに』とまで言っている」と紹介した。
自ら所属する若手農家のグループ「4Hクラブ」の活動も活発だと言い、「どんどん若手が入ってきて、僕はオジイチャンと呼ばれるぐらい。農業では食っていけないという先入観を持たされている子どもが多いけど、窪川の後継者のイメージはそんなに暗くない」。
今年7月には農業を志す若者を支援するNPO法人設立に参画した村上さんは、「偉い人があいさつで『農業の状況は厳しい』と必ず言うじゃないですか。そういうことはもう言わないでほしい」ときっぱり。
農協生活30年の古谷さんからも明るい話が続いた。「大きいところでは販売高が億を超えている」という養豚などの畜産農家や、興津にUターンした若者がミョウガ栽培を始めた初年度から地域でトップの販売高を記録したことなどを挙げ、「所得の得られるところには若い人が集まっている」と現状を分析。村上さんとともに「消費者に農家の取り組みを知ってほしい。もっと農業を新聞で取り上げて」と要望した。
これに本社側は、写真ものやイベント以外で日常的に農業記事を掲載していく難しさを挙げる一方、記者が梼原町の棚田のオーナーになって農業体験をリポートしたことも説明。「本県は一次産業の県。連載や企画などで農業の内側を紹介していきたい」と応じた。
古谷さんによると、後継者対策に苦戦しているのは窪川の一大ブランドである仁井田米の生産農家。稲作だけで十分な年収を確保するには10町(約10ヘクタール)の農地が必要だが、水利権の問題が絡んで農地の確保が難しくなっているそうで、「稲作に不可欠な水路を維持するには一定の人数も要る。水利権の調整をどうするかが、仁井田米を維持していく上で大きく問われている」。これには一同、腕組み。
それでもやはり、出席者の仁井田米への愛着は深かった。川上さんは「県内外で名が通っている仁井田米を毎日食べられるのは本当にぜいたく。農業体験などの『食育』を通じて子どもたちに地域の誇りを持ってもらうことで、素晴らしい町ができていくんじゃないか」。子どものころから窪川の農家の元気の良さにあこがれていたという秦泉寺さんも「親の世代が夢と誇りをもって取り組めば、子どもも育っていく」と同調した。
【写真説明】町の未来像や産業振興、本紙への要望などで活発に意見交換した「夜なべ談議」(窪川町内の料理店)
要望・提案 地域に刺激与えて 活性化 共に参画を
川上さんは、陸上競技で活躍した中学時代からのスクラップ帳を持参。スポーツ欄から新聞に親しんでいった。
「このスクラップを見ると当時の風というか、思いがよみがえって、何かあった時に見ると励みになる。試合があった時には、翌日の朝刊が待ち遠しかった。デジタル化が進んでも、色あせていく新聞は趣がある」
さらに、PTA会長の立場から「スポーツに、文化活動にと頑張っている子どもたちの姿を出してもらえれば非常に励みになる。保護者はもちろん、地域の人も関心がある。これからも、新聞をめくると地域の顔が見えるように」とも注文。
本社側は関連して「全国の新聞社で『教育に新聞を』(NIE)という活動をしている。高知新聞社内にもNIE班があり、学校に出張して子どもたちに記者体験や新聞作りを学んでもらう出前授業とか」と説明、理解を求めた。
RKC高知放送のラジオリポーターの経験もある秦泉寺さんは、取材される側としても新聞の影響力を痛感する一人。
「私がかかわっている『くぼかわ新聞』を記事にしてもらった時などに、読者からダイレクトに反応を受けたり。今回の『ふれあい高新』でも地酒倶楽部の仕込みを記事にしてもらったら、事務の女性が『仕事にならないくらい商工会に電話がかかってくる』と。報道の側と一緒に盛り上げていく関係が築けたら」
古谷さんは「今回の報道を見て地域のことが大きく報道されるというのは、地元にいながら地元の取り組みを非常に新鮮に、こんなに頑張っているのかと感じた」
「地域を刺激するような役割を」と求めるのは川村さん。「支局長さんに地域の会に来てもらい、活性化へ一緒に参画してもらえれば。これは行政に働き掛けるべきだとか、それは住民がもっと頑張らないかんとか、分析してもらいたい」
これには「支局の記者を存分に使ってください。取材する立場であると同時に地域の住民ですから」「支局時代は記者にとって一番思い出深く、もう一つの古里という意識がある。地域に育てられ、鍛えられた、その気持ちは忘れない」と本社側。
村上さんは「(窪川に来た当初に)『夕刊が届いてない』と販売所に言ったことがある。ここには届かないことを知り、ちょっと驚きでした」。(一部地域では夕刊配達)
本社側は「県内全域へ夕刊を届けるのが目標だが、広い県内、なかなか困難。販売所に近いところから順次夕刊を取っていただかないと効率も悪い。できる限りの努力はしていく」。
やりとりではこんな場面も。「1年間、若い記者を地域に住まわせて農業を体験させるのはどうでしょう」―。本社側の提案に、出席の読者は「それは面白い」。村上さんが「グリーンツーリズムで時々来ても分からないことがある。よし1年やるぞ、となって初めていろいろ分かるのが農業」と関心を寄せた。
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