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第2部 フランス  18.製陶の町バロリスで
ピカソの彫刻「羊を抱く男」のそばで歓声を上げる子どもたち(バロリス)  「ピカソ、ピカソ、イエーイ、ピカソー!」
 子どもたちは歓声を上げ、その彫刻に抱きつくようにして、写真のポーズに応じてくれる。
 少し冷や冷やしながら様子を写真に収める。彫刻はピカソの作品「羊を抱く男」なのである。ピカソの屋外彫刻というのは意外に少なく、珍しい。
 南仏アンティーブのピカソ美術館からほど近くにあるバロリスという小さな町を訪れていた。
 香水と陶器の製造が主な工業であった何の変哲もない町を、ピカソが変えた。
     ◇
 1946年ごろ、ジョルジュ・ラミエという製陶業者のもとをピカソは訪れた。
 そこでピカソは、粘土を少し手に取って、面白そうに小さな人物像を数体作った。1年後に来てみると、自分の作品が焼き上がって大切に保存されていた。ピカソは喜んだ。
 「新しい領域を征服しよう、あるいはむしろ新しい表現手段を見いだそうとする考えが、またしてもピカソを虜(とりこ)にした」(ローランド・ペンローズ「ピカソ―その生涯と作品」)
 陶芸作品への熱中が始まった。そしてピカソがデザインしたものは、ラミエの所で働いていた熟練工によって忠実に複製された。ピカソの存在によって、バロリスの製陶は息を吹き返していった。
 ピカソ70歳の誕生日をバロリスの製陶職人らが祝った。その宴席は、町の小さな礼拝堂で行われた。ピカソはその場で礼拝堂に壁画を描くことを約束する。
 大作「戦争と平和」は、世界各地を巡回して高い評価を得た後、バロリスに戻り、礼拝堂の壁画となった。小さな町の礼拝堂はこの大作を収めるピカソ美術館となった。
 今でも、この美術館と広場にある彫刻を目的に、多くの人々がバロリスを訪れ、お土産として陶器を買っていく。
  ◇
 「歴史的記念碑とこれ以上生活を共にしたくない」
 当時の恋人であったフランソワーズ・ジローが後世に残るせりふで、ピカソのもとを去ったのもこのころのことだ。
 フランソワーズと別れる直前、ピカソはジョルジュ・ラミエの親類であったジャクリーヌ・ロックと出会っていた。
 【写真】ピカソの彫刻「羊を抱く男」のそばで歓声を上げる子どもたち(バロリス)

平成16年4月6日付夕刊掲載


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