
今までにはないものを感じていた。こんなに親密で優しいピカソの絵と対面するのは初めてだった。
パリの美術館「ピナコテーク・ド・パリ」で開かれていたジャクリーヌコレクションによる展覧会の作品の数々に心が震えた。
本県のピカソ展にも出品される大作「椅子(いす)に座るジャクリーヌ」を目前にしている。
その絵には、椅子に腰かけるジャクリーヌが青の色彩を主体にして描かれている。誇張された頭部と手は、彼女のあふれる生命力を表し、腹部はキュビスム的な手法で描かれている。その人体のゆがみも含めて、とても愛らしいジャクリーヌだ。
そして、ジャクリーヌの全身を覆う青はクールであるけれども、優しい。この老境の「青」は「青の時代」とは明らかな違いを持っている優しい「青」だ。
この絵が描かれた1964年のころ、80歳を過ぎたピカソはジャクリーヌと正式な結婚を果たした後で、ついのすみかとなる南仏カンヌの近郊に落ち着いていた。
絵画的な挑戦はなおも続けながら、深い情愛を込め、楽しみながらジャクリーヌを描いている――そんなピカソの姿を思った。ジャクリーヌが最期まで手放さずに保管していた気持ちが分かるような気がした。
「高知での展覧会も良いものになると確信しました」
県立美術館の松本教仁・学芸員はパリでの展覧会の感想を話す。
「世界中でピカソ展は開催されていますが、大体は数点の有名作品を核にして組み立てられていますよね。こんなふうに質の高い作品が粒ぞろいなのは珍しいのではないでしょうか」
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パリでのキュビスムの創始と進化によって、ピカソは絵画史にその名を刻む画家としての地位を確立する。そして1937年の「ゲルニカ」によって名声は広く世界的なものとなった。
ピカソはパリと南仏とをしばしば行き来しているが、戦後になって南仏に居を定めることになる。
その足跡を追い、パリを離れて南仏へと向かった。
【写真】ジャクリーヌコレクションによるパリでの展覧会風景。彼女の姿が情愛を込めてさまざまに描かれている(パリのピナコテーク・ド・パリ)