
ピカソがピカソらしく、そしてしばしば難解だと言われるようになるのは、キュビスムといわれる手法を絵画に取り入れるころからだろう。
キュビスムは立体派と訳されるが、立方体派とするのがより正確だという指摘もある。この名称の由来は、ジョルジュ・ブラックの絵画からとされる。ブラックは、ピカソの「アヴィニョンの娘たち」の衝撃、そしてセザンヌに対する尊敬の念から、風景を単純な幾何学的な形態に置き換えた絵画を制作した。
この作品に対して、アンリ・マティスが「小さな立方体(キューブ)とでもいうべきものが顕著だ」と言い、そこからキュビスムという名称が定着していった。そしてそれはさまざまな形で進化していき、世界中の芸術家たちに影響を与えていくことになる。
いったいキュビスムとは何だろう。
対象物(神話、風景、静物、人物…)を一つの視点によって描くというのがこれまでの絵画の伝統だった。印象派は、対象物に自分の心象を反映させ、さまざまな手法を使ってそれを絵にした。
キュビスムはそこに新しい次元を用いた。それは複数の視点であり、対象物の分析であった。例えばギターはばらばらに分解されて、また再構成された。絵画に実際の新聞紙を張り付けるなど「異物」を混入させることで、絵画の意味を問い直した。
岡本太郎は著書「青春ピカソ」で書いている。
「ピカソ芸術の真にピカソ的な展開は立体派に始まる。この芸術革命は既成の絵画理念を根底から破壊し去り、史上驚異的な20世紀アヴァンギャルドを確立する。立体派以後とそれ以前の世界との断絶は、美術史における最大の断層である」
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パリに来て思う。やはりこの都市が有する圧倒的な美の蓄積と確固たる伝統の重みに、スペイン人ピカソは、いったんは打ちのめされたのではないか。
伝統の延長ではどうしようもない。新しい手法の美を創造するしかない、と。
そして、もう一つ。やはりピカソは人を驚かすことが好きなのだと思う。びっくりさせてやろうという気持ちは、彼の変貌する芸術に通底するものだと感じる。
【写真】パリのピカソ美術館に展示されているピカソの絵画用具