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第1部 スペイン  10.自己の絵画を求めて
ピカソの壁画があるカタルーニャ建築協会の建物。右は銅像のように見えるが生身の人間によるパフォーマンスだ(バルセロナ)  ピカソにとってのスペインとは何だったのだろうか。
 画家・岡本太郎は著書「青春ピカソ」の中でこう書いている。
 「ついにピカソはスペインの灼熱の太陽と、暗い闘牛の血の間に生まれ、育った自然児である」
 その重要な初期作品を所蔵しているバルセロナのピカソ美術館を訪ねた。
 ピカソは伝統絵画の破壊者というような言い方がされる。そうなのではあろうが、ピカソのすごみは伝統絵画の技法や精神を完全に自分のものとしていることにある。
 それをまざまざと感じたのは、美術学校の入学試験で描いたデッサンや絵画といった作品からだ。学校で習う以前から、もう超人的に描ける人だったのだ、と。
 この美術館が所蔵する初期の重要作品「科学と慈愛」を見て、その思いを強くした。
 しかも、作風を自由自在に操ることができる。スペイン的な伝統絵画から印象派風、ロートレックみたいな絵まで、単なるまねごとでなく、自分を表現するための一つの手段として使いこなしているように思う。
 この段階でピカソはまだ、独自の「手段」を見つけていない。誰に指摘されるまでもなく、それはピカソ自身が最も強く自覚していた。
 必然的にパリを目指すときが来ていた。なぜなら、そこは世界の芸術の都であるからだ。
 ピカソが初めてパリを訪れたのは、19回目の誕生日を迎える数日前だったという。バルセロナとパリとの往復を繰り返した後、この芸術の都に本格的に居を定めることになった。
 天才ピカソをも引きつけた、この都の魔力とは――。バルセロナのけん騒を名残り惜しく感じながら、パリへと向かった。
 【写真】ピカソの壁画があるカタルーニャ建築協会の建物。右は銅像のように見えるが生身の人間によるパフォーマンスだ(バルセロナ)
 

(学芸部・竹内 一)
 =第1部おわり

平成16年3月26日付夕刊掲載


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