
4匹の猫という意味の居酒屋「クアトロ・ガッツ」は1897年、バルセロナ中心地の裏通りにオープンした。6年ほど営業しただけであったが、ピカソという青年が出入りし、その作品を展示したということで、後に伝説的な店となる。
そしてピカソ生誕100周年の1981年になって、当時の店の雰囲気を再現したかたちで再びオープンした。
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訪れたのは平日の午後2時ごろであったが、ランチをとる人たちで大変なにぎわいだった。「いらっしゃいませ」と日本語でウエーターに迎えられ、気の抜けた味のソースがかかる伸びたスパゲティを食べた。
だが、当時の芸術家たちが集った活気ある酒場の雰囲気は伝わってくる。「昔通りのインテリアだ」と胸を張る店員に、「ピカソはどこに座っていたの?」と尋ねると、笑って「あちこちだろう」との答えが返ってきた。
この「4匹の猫」に出入りしていたころ、ピカソは18歳。集まる芸術家たちの中では年少者であったが、すぐに才能を見込まれる。
ペンローズの伝記には当時のピカソのことが、「無口だがものごとを非常に正確に判断する男という評判をとり、彼を知った人はただちに彼の崇拝者になるか、さもなければ敵になった」と書かれている。
このころのピカソは素描に没頭していた。街頭風景、闘牛や闘牛士、波止場の水夫、キャバレーやダンスホールの様子など、おびただしい数のデッサンが残されている。
なかでもピカソは闘牛を愛した。生地マラガにも立派な闘牛場があった。9歳のときに描いた作品「ピカドール」もその様子を生き生きととらえたものだ。闘牛場にいるピカソの写真をいくつか見たが、表情はどれも、とても幸せそうだった。
ピカソ語録の一つに、こんなのがある。
「人々は僕が闘牛を見終わってから絵を描いたと思っているけど、どうしてどうして実は闘牛が始まる前の日に描いたものだよ。そしてその絵を誰彼なしに売りつけては、闘牛場の入場券を買う金をかせいだのさ」
【写真】ピカソが通ったバルセロナの居酒屋「クアトロ・ガッツ」。当時を再現して営業している