
「ピカソなんて、私の周りではあんまり関心ないみたい。ここで生まれたんだけど、あんまり長くは過ごしてないでしょ?」
東京出身でマラガ大学に留学している山本紘子さん(21)は言う。スペイン語の習得とフラメンコを学ぶためにやって来ている。
「でもピカソ美術館のオープニングには、スペインの国王夫妻が来て、みんなびっくり。私も王様を見に行っちゃった」
2003年10月、生地マラガにピカソ美術館がオープンした。開館式典は、国王フアン・カルロス一世とソフィア王妃が出席して盛大に開かれた。同地では記念行事として闘牛も行われ、国王夫妻やピカソの親族たちも楽しんだという。
ピカソの主な個人美術館は、マラガの同館を含めて世界に5館ある。フランスのパリ、アンティーブ、バロリス、スペインではバルセロナの各都市だ。
今回の取材では、そのすべての美術館を訪れたが、皮切りとなるのがマラガのピカソ美術館であった。
実は「ゲルニカ」を所蔵するマドリードのソフィア王妃芸術センターでは、館内の撮影許可を得ることがどうしてもできなかった。英語力不足から意思疎通が十分にできなかったためだ。今回はスペイン語の話せる通訳が必須だった。
マラガの観光案内所で聞くと、日本語のできる通訳はいないという。マラガで働いている日本人はいないか。すし店や日本料理店、指圧の店…電話帳を繰りながら調べてくれるが、いない。
小一時間ほど格闘してもらって、マラガ大学に2人の日本人学生がいることが分かった。案内所の女性から「もうすぐ昼休みになるから、すぐに行きなさい」と言われて、タクシーに飛び乗り、キャンパスでつかまえたのが山本さんだった。
「テレビで連日報道しているけど、開館時間前には何千人という行列ができて、大変なにぎわいみたいですよ。そんなふうだし、入館料(8ユーロ=約1000円)も高いからさ、みんなまだ敬遠してる」
「ピカソ? 変な絵を描く人でしょ。私もあんまり興味はないな」
そんな急ごしらえの通訳とともに、ピカソ美術館に向かった。
【写真】昨年10月にオープンしたスペイン・マラガのピカソ美術館。世界各国から訪れた人たちでにぎわっていた