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東京・六本木にある日本中央競馬会(JRA)の本部事務所。建物内の記者クラブから日本経済新聞社の野元賢一さん(40)が出てきた。
野元さんは同社の競馬専門記者。ギャンブルとしての競馬を取材するだけでなく、競馬事業のあるべき姿を模索し続けている。
彼のコラムは、こんな調子。
〈地方競馬の失敗は『官業の失敗』。破たんした『官業としての競馬』に幕を引き、官から自立した競馬を立ち上げる。その上で競馬と社会との合理的な関係を模索する。極めて難しい事業だが、競馬の再生には不可欠である〉
野元さんは、日本の競馬の在り方を検討する農水省の有識者懇談会の委員として意見を述べた経験を持つ。高知競馬に足を運んだこともある。長年にわたって競馬を見てきた専門家の目に、今の地方競馬はどう映っているのだろう。野元さんに話を聞いた。
―「官業の失敗」の原因は?
「当事者意識の希薄さ、責任意識の希薄さ、プロフェッショナリズムの希薄さ。主催者(行政)に意識がなさすぎるんです。親会社(県や市)から主流じゃない人や知識のない人が来て座り続けた。競馬事業をやるために役所に入った人はいないわけです」
―意識のなさ、を具体的に…。
「一つは長期的な展望のなさ。施設はいずれ古くなり、補修や建て替えが必要になります。なのに資産の減耗なんて考えない。黒字の時はすべて主催者の財政に繰り入れ、多くの地方競馬が備えをしなかった。これではもうかれば吸い上げて、もうからなくなればやめるしか選択肢がありません」
―もう一つは?
「行政の事なかれ主義です。売り上げが減れば関係者と交渉して経費を削る必要があるというのは子どもの足し算、引き算ですよ。なのにやってこなかった。嫌なこと、面倒なことから目をそむけ続けた。経費削減には役所の側も身を削る必要がある。それが嫌だったのかもしれません」
―ほかには?
「レースのつくり方もそうです。地方競馬はレースが商品であるという意識をどこまで持っていたでしょうか。売り物は馬券しかないんですから、本来は相当の企画や努力が要ります。結果に結びつくかは別にして、この点ではJRAの番組企画部は夜中までむちゃくちゃ働いています」
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働いていると言えば、高知競馬の仕事師たちは懸命に働いている。
事実上の倒産をしてから、高知競馬は赤字を出さない「出来高払い制」に移行した。そうやって限界まで手当を削り、なお、仕事師たちは走り続けようと頑張っている。あのハルウララブームも「競馬を残したい」という彼らの強い意志と覚悟が生んだのだ。
踏ん張り続ける高知競馬に展望はあるのだろうか。野元さんは言う。
「結局、今の経営形態ではどうしようもないと思うんです。民間同様の合理的なシステムを立ち上げ、仕組みをきちんと生かせる人が運営する。これだけで決して十分とは言えませんが、そうしないと生き残れない。競馬の縮図は日本の縮図です。30年先をまともに考えている人なんていないんです」
【写真】肉弾戦(高知競馬場)
(平成16年6月30日付夕刊掲載)
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