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高知競馬の関係者が、こんな話を耳打ちしてくれた。
「10年くらい前、当時の幹部が競馬場の肥料を買う、と言いだしたんです。芝生にまく、と言ってね」
芝生と言っても、高知競馬のコースは砂。「なぜそんなものがいるのか?」と聞くと、当時は芝生があった観客用広場の土壌改良だという。
「おかしいと思いましたねえ。なぜって、そんなものがいるのかというのが一つ。それまで買ってなかったわけだから」
記憶では、購入費は年間100万円以上(別の関係者によると、平成8年度で年120万円)。施設建設費の償還残金が70億円近くあり、累積赤字も既に20億円を超えていた。肥料としては異様に高い金額だと、この男性は感じた。
「仮に買う必要があったとしても、別の業者の肥料と比べるわけでも入札するわけでもない。幹部が言いだして突然に買った。そもそも競馬場の運営では随意契約が当たり前。その異常さを誰も言わない」
肥料の取扱店は、県議会議員(当時)が経営する会社。ところが実際に肥料を直接販売し、契約にやって来たのは右翼団体の男性だったという。
「私はそんな立場じゃないし、詳しい理由は知らされませんでした。でも何かあったのではと、誰でも思いますよ。それにその肥料、ほとんど効果はなかったですよ」
「高価な商品」の購入は平成6年度から3年続いた。その後は予算縮小に伴って買うことはなくなり、記憶からも消えた。
彼がこの話を思い出したのは、右翼団体にいた販売者が、昨年亡くなったと知ったからだ。
「ああ、これでこの話も終わったと思いましたね。売った当事者はもういないわけだから。10年も前だし、予算書にも記載してないでしょうし。ほっとしている人もいるでしょうね」
予算書を繰ってみたが、確かに肥料の記載はなかった。
男性は投げやりな言い方で続けた。
「要は経営の問題。赤字の原因は、そこにある」
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日本中の地方競馬が、あえぎ続けている。馬券が売れない、客が来ない。困窮の原点は「自治体が経営」せねばならないという地方競馬の限界にあり、「『役人競馬』は、もはや立ち行かない」と結論を下す人もいる。
累積赤字88億円、施設建設費の償還残金41億円。高知競馬は巨額の負債を抱え、昨年春、事実上「倒産」した。
その上で、これまで積み上がった借金を経営者である県と市がいったん清算、高知競馬は借金ゼロから再びスタートを切った。しかし帳消しになったからといって、過去にふたをして前に進めるものではない。借金返済は県民に負担を強いる。ならば積み上げた責任者は誰で、なぜ破たんしたかの報告書がいる。
肥料の逸話一つをとっても、経営体のずさんさが透けて見える。しかし、経営に携わってきた人たちの肉声や説明は、私たちに届いていない。
過去と向き合わずして、これからの競馬経営に必要なものは見えてこない。
連載第5部は、競馬経営を進めてきた公務員や関係者の証言を集めた。自治体が経営する競馬とは、何なのだろうか――。
【写真】騎手も馬たちも自治体の経営にほんろうされる(高知競馬場)
関係者「随意契約が当たり前」
(平成16年6月23日付夕刊掲載)
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