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南海トラフの地震を探るため、研究者たちは陸上や海上で可能なあらゆる方法を試みてきた。
しかし、多くの研究者の夢はずばり、「地震発生帯を直接見る」こと。発生帯で何が起き、どうなれば地震が起きるのか。海底下の深部に潜んでいるだけに直接研究することはできなかった。
この夢が間もなく、現実のものになろうとしている。
■掘る穴は1本
日米欧などが参加する統合国際深海掘削計画(IODP)で、海底下5キロ以上の地震発生帯まで掘削する計画が進んでいる。発生帯の物質を手に入れると同時に、掘った穴を使って発生帯を直接、長期観測する。
現在、観測地点の候補には東南海地震の発生帯である紀伊半島の熊野灘沖が挙がっている。同じ南海トラフの地震であり、南海地震と連鎖的に発生することからも、南海地震の研究に貢献するはずだ。
特に、掘った穴を利用する長期観測は「地震の巣」の生のデータ。地震予知への貢献が注目されている。センサーは地震計のほかにひずみ計、傾斜計などで深さに応じて設置。観測データはケーブルで陸上に瞬時に送られる。
海洋科学技術センターで長期観測の責任者を務める末広潔理事は「当面、掘る穴は1本。少しでも多くのセンサーを入れたい」と意気込む。
本当に深部まで掘削できるのか技術的な問題も残るが、長期観測の最大の課題は具体的にどこを掘るかだという。「地震発生時に破壊が始まる可能性が高いところを掘ることが重要。これまでの各種の研究成果を参考に見極めたい」と末広理事は話す。
■試金石
この長期観測計画は世界中から注目されている。「例えば水と地震の関係も注目されます。地震発生帯の破壊には水の動きが関係しているとの見方もあり、長期観測で水の動きをつかむことができれば、その関係も探ることができる」と末広理事。
しかし、相手は自然。しかも、人類が初めて手を入れる領域だ。成果が出る保証はない。予想外の大発見があるかもしれないが、全く役に立たない恐れもある。要するに、やってみないと分からない。
末広理事はこう力説する。「この取り組みが、地震予知はできるかどうかの大きな試金石になると思います」
掘削の開始目標は3年後。長期観測の開始はさらに数年後になりそう。次の南海地震が徐々に迫る中、南海トラフの地震研究は今、新たな時代を迎えようとしている。
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連載「南海トラフ―室戸沖深海底を探る」は研究者の最近の取り組みのごく一部を紹介した。研究者たちの挑戦は刻々と進展している。そこには夢とロマンがあり、私たちの命も懸かる。10年、20年後にはまた新しい南海トラフの姿が描けるに違いない。引き続き、研究の最前線を追っていきたい。
【写真】掘削孔の長期観測が「地震予知の試金石になる」と話す末広潔理事(東京都港区の海洋科学技術センター東京連絡所)
(社会部・高橋 誠)
=シリーズおわり=
(2003年11月23日付朝刊掲載)
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