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南海地震の発生帯では、地震で破壊された岩盤の修復に水が一役買っているらしいことが分かってきた。
ところが、水は地震の発生そのものにも深くかかわっているのではないかという見方が出ている。海洋科学技術センターなどの人工地震波探査では、南海トラフの地震発生帯近くに強力な反射面が確認されている。相当量の流体が存在するためと考えられている。
■地滑り
実は水などの流体が地震を引き起こすとみられる事例が陸上で多く報告されている。
かつて米国やオーストラリアなどのダム建設で、たん水を始めたところ大きな揺れが発生し、話題になった。米コロラド州では化学廃液の処理に困った軍が、地下3・7キロまで掘削。廃液を流し始めたところ微小地震が頻発し、中断すると減少したという。
高知大理学部の橋本善孝助手は、南海トラフ地震発生帯で、流体が岩盤にどうかかわっているか研究している。
流体が岩盤に及ぼす作用は、山の地滑りを考えると分かりやすいという。「地滑りが発生するのは、雨などで大量の水が染み込み、ある部分の地盤を浮かすためと考えられます。普段は重さで垂直の力がかかり、摩擦が大きいので滑りませんが、水が入って、ある部分の地盤が浮いてしまうと、摩擦が小さくなり滑りやすくなるわけです」
■確証はなし
橋本助手によると、地震発生帯では、岩盤のすき間に水などの流体が閉じ込められていて、何かの拍子に岩盤が動くと、流体の温度が上がり、岩盤を押す圧力が増大することが考えられるという。
室内実験では、流体の圧力が上がると、岩石の強度自体が下がることも立証されている。「流体がない状態だと岩盤は非常に強く、なかなか壊れませんが、流体を利用すれば、巨大な岩盤も動かすことができるのです」
しかし、地震発生帯は手の届かない海底下の深部。陸上での現象や実験室の結果がそのまま当てはまるのか、誰も確証は持てない。
「流体が岩盤を動かしても、それが本当に地震波を発生させるかどうかを決定付けるものではありません。しかし、流体は地震発生に重要な役割をしているはずです。ただ、具体的にどのように地震発生にかかわっているかは現状では分かりません」
それでも研究者たちの丹念な検証は続く。陸上で見つかる四万十帯の岩石には、今でも数ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリ)から50ミクロンの大きさの流体が閉じ込められているという。橋本助手はそこから流体の圧力と岩石強度の関係をこつこつと探っている。
【写真】地震発生帯にあったと思われる岩石中の石英脈に閉じ込められた10ミクロン弱の流体(顕微鏡写真、橋本善孝助手提供)
(2003年11月21日付朝刊掲載)
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