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南海トラフ―室戸沖深海底を探る―
第3部・地震の巣 【4】
断層修復する接着剤
 高岡郡窪川町の震源断層。太古の南海地震の震源域跡が陸上に存在する事実を突き止めただけでも大きな成果だ。

 「地震の化石」といわれるシュードタキライトは、見事なまでに岩塊を貫いていた。地震の際、膨大なエネルギーで岩盤が裂けたことがよく分かる。しかし、この断層にはさらに驚くべき秘密が隠されていた。

震源断層を説明する坂口研究員。周辺には赤茶けた岩もある(窪川町小鶴津の海岸)  ■鉱物脈

 窪川町の震源断層の特徴は、シュードタキライトのほかにもう一つあった。表面が赤茶けた岩塊が多いことだ。これは炭酸塩が主成分の鉱物脈で、アンケライトと呼ばれる。風化して赤茶色に変色したとされている。

 案内役の海洋科学技術センターの坂口有人研究員は「炭酸塩の鉱物といえば、コンクリートもその一種。この鉱物脈もセメントの役割があって、地震でできた断層の裂け目を再びひっつけたと考えられます」と言う。

 南海地震ではプレート境界の固着域の岩盤が突然破壊し、滑って断層ができる。しかし、この岩盤は次の地震までの間に強度を回復しなければ、地震のエネルギーをためることはできない。

 「ビルの柱も車のフレームも同じですが、一度壊れると非常に強度が下がります。ところが鉱物脈によって修復されれば、岩盤は再び強固になり、次の地震の準備ができるわけです」。地震とはいえ、ある意味で感心させられる仕組みだ。

 ■大量の水

 ところで、アンケライトはどうやって形成されるのか。「地震の後、岩盤の割れ目を通って水が流れたと考えられます。水には炭酸塩が溶け込んでいて、割れ目に沈殿していきます。こうして断層沿いにたくさんの鉱物脈が生成される。つまり、水が断層の固着に貢献しているわけです」と坂口研究員。

 しかも、鉱物脈を形成するにはかなりの量の水が必要という。「炭酸塩1ccを溶かすには1リットルもの水が必要です。つまり1000倍の水」

 しかし、南海地震の発生帯は圧力と熱でどんどんと水分が抜け、地層は岩石化が進んだ状態。それゆえ、ひずみがたまり、地震が起きるはず。そんな大量の水が一体、どこから入ってくるのか。

 坂口研究員は海底から入り込む可能性はないという。「地震発生帯から海底に伸びる巨大逆断層は低角ですし、何より深部にいくと圧力で水は押し出されますから。水といっても、岩石中の物質が化学変化して発生したもので、地震発生帯よりさらに深部から上って来るのだと思います」

 震源断層に込められた地震発生帯からのメッセージ。その解読はいまなお続いている。

 【写真】震源断層を説明する坂口研究員。周辺には赤茶けた岩もある(窪川町小鶴津の海岸)

2003年11月20日付朝刊掲載


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