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南海トラフ―室戸沖深海底を探る―
第3部・地震の巣 【3】
窪川で世界的大発見
 「窪川に5000万年前の震源断層」。7月下旬、南海地震のメカニズムの解明につながる画期的な発見のニュースが飛び込んできた。

 高岡郡窪川町小鶴津の海岸に露出する断層が、5000万年前の南海地震の震源域の跡であることが分かったのだ。

 東大大学院生の池沢栄誠さん、海洋科学技術センターの坂口有人研究員(元高知大助手)、東大大学院の木村学教授の3人の研究成果で、プレート境界型地震の震源断層が陸上で見つかるのは世界で初めてという。

岩石を割るように入っているシュードタキライトの線(窪川町小鶴津の海岸)  ■学生の功績

 坂口研究員の案内で現地を訪れた。山と海が接する断崖(だんがい)。現場はロープを使って下りなければならない海岸で、普段は釣り人しか入らない。

 窪川町など本県中部、南部の大半は「四万十帯」といわれる地質に属する。海側プレートが陸側プレートに潜り込む際、海底の堆積(たいせき)物が陸側プレートに押し付けられてできる付加体が、長い時間をかけて隆起した地層だ。

 「実はこれまで、四万十帯では震源断層は見つからないと考えられてきました」。坂口研究員が解説を始めた。

 巨大地震が発生するプレート境界の固着域の生成温度は150―300度。四万十帯の生成温度はもっぱらそれより低いと想像されてきたという。付加体が海底下の比較的上部に存在するためだ。

 「ところが90年代になって研究が進み、四国の四万十帯の生成温度は、多くが約150―270度もあることが分かってきました」

 当地の断層のある地層は「興津メランジュ」と呼ばれ、特に生成温度が高いことが判明。2年前、高知大の理学部生だった池沢さんが、卒業論文のために丹念な調査と分析を試みた結果が、今回の大発見につながったという。

 ■地震の化石

 下り立った海岸は落石や大型の岩塊で埋め尽くされていた。「この黒っぽい層がシュードタキライトです」。坂口さんが指さした岩塊には厚さ数ミリの黒い線が走っていた。  シュードタキライト。地震で岩盤がずれた際、非常に高い摩擦熱で周囲が溶け、ガラス化した物質だ。大地震の震源断層に特有の「地震の化石」で、これが見つかったということは、断層が震源断層である動かぬ証拠となる。

 過去、内陸直下型地震のものはよく見つかってきたが、海底下のプレート境界型地震のものは初めてという。

 この海岸のシュードタキライトは幅5、6メートルの岩塊に何層も走り、別の層を切っているものもある。「新しい層が古い層を切ったのでしょう。繰り返し地震が起こった証しです」。坂口さんの解説は一層熱を帯びていった。

 【写真】岩石を割るように入っているシュードタキライトの線(窪川町小鶴津の海岸)

2003年11月19日付朝刊掲載


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