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南海トラフ―室戸沖深海底を探る―
第2部・コアセンターの挑戦 【4】
眠る膨大なメタン層
 「これが水深1、100―1、200メートルの四国沖の土佐海盆で採取されたコアです」。高知大学海洋コア総合研究センターの安田尚登センター長が、一枚の海洋コアのCTスキャン画像を示した。

 「黒く見える層がメタンガスが存在したと思われる空洞で、海底下15、6メートルほどの層。海底下の圧力条件からすれば、この海域は海底下50メートルくらいからメタンハイドレートがあると考えられます」

土佐海盆で採取されたコア。黒く見える層がメタンガスが存在したと思われる層(高知大海洋コア総合研究センター提供)  ■ 注目の新資源

 「メタンハイドレート」。海底下の温度と圧力で、メタンガスが氷状の水分子に閉じ込められている層だ。

 日本近海には膨大な量のメタンハイドレートが眠っており、近未来のエネルギー源として注目されている。埋蔵量は日本の天然ガス消費量の約100年分に当たる7・4兆立方メートルという試算もあるほどだ。

 音波探査の結果では、特に四国沖など南海トラフの陸側海域に多い。黒潮がもたらす豊富な有機物が時間をかけてメタンとなり、海底下に蓄積するためと考えられている。千島海流も有機物の生産性が高いが、房総半島沖はメタンハイドレートが非常に少ない。有機物が深い日本海溝に落ちてしまうからだ。

 ただ、四国沖を掘削しても、メタンハイドレートは簡単には見ることができないという。掘削した海洋コアにメタンハイドレートが含まれていても、引き揚げる途中やコアを分割する際に噴き出てしまい、消えてしまうからだ。「実際、過去に日本近海でメタンハイドレートが塊で採れたことはほとんどありません」と安田センター長。

 ■ サーモスタット

 結局、日本近海のメタンハイドレートの実態は詳しくつかめておらず、どのように形成されるのかも含め謎だらけという。このため統合国際深海掘削計画では、メタンハイドレートの研究は重要テーマの一つになっている。

 メタンは地球温暖化物質としても知られる。炭素と水素でできており、常時、海底下から海中にわき出している。海洋コアから地球の環境変動を解析している安田センター長は、メタンハイドレートが地球の炭素の貯蔵や排出に大きな役割を果たしていると考えている。

 「地球は氷河期になると、氷が増えて海面が下がります。すると海底にかかる圧力も弱まり、海底下からわき出すメタンの量が増え、地球の温暖化に寄与する。逆に温暖化になるとメタンが抑えられる。つまり、メタンハイドレートは地球のサーモスタットの役目を果たしているのではないでしょうか」

 四国沖の掘削からは、こうしたスケールの大きな研究成果が期待される。

 【写真】土佐海盆で採取されたコア。黒く見える層がメタンガスが存在したと思われる層(高知大海洋コア総合研究センター提供)

2003年7月18日付朝刊掲載


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