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ベールに包まれた四国沖の南海トラフ海底。ことし2月には、高知大でシンポジウム「南海トラフの生物と地質―化学合成生態系とその進化」が開かれ、全国から集まった第一線の研究者が最新の取り組みや成果を披露し合った。
調査が思うように進まなかった海域だけに、研究者の四国沖への関心は高い。
■四国沖に鍵
藤倉克則・海洋科学技術センター研究副主幹は、あるシロウリガイの分布の謎を追っている。
「相模湾の初島沖と、沖縄の沖縄トラフに同じ種類のシロウリガイがいます。途中の海域からはまだ見つかっていない。双方の貝を分析してみると、どうも初島沖から沖縄トラフに移動した可能性が高いのです」
初島沖からはるか沖縄沖へ。しかも黒潮の流れとは逆方向だ。
「南海トラフの海底には黒潮とは逆の流れがあるのかもしれません。ただ、代を重ねても、これほどの距離は簡単には移動できない。謎を解く鍵は中間に位置する四国沖にあるかも。このシロウリガイが南海トラフにいないか調査してみたい」
初島沖のシロウリガイは微妙な温度変化で季節を読み取り、放卵・放精を一斉に行って子孫を増やしていくという。四国沖ではまだ確認されていない現象だ。
■冷湧水の謎
深海底の生物の分布は、化学合成生物の栄養源となるメタンや硫化水素を含んだ冷湧(ゆう)水の存在に深くかかわっている。
生物が比較的少ない室戸沖の「先端観測ステーション」の周辺は、直接的な調査は行われていないが、「シロウリガイがいるので冷湧水は出ていると考えられています。ただ、貝の数が少ないことやガンマ線調査の結果などからも、量は少ないのではないか」と高知大理学部の岩井雅夫助手。
ステーションで続けられるシロウリガイの定点観測でも、当初2個体いた貝のうち1個体は死に、もう1個体はどこかへ移動してしまった。冷湧水に変化が起こったのかもしれないという。
一方、足摺沖の深海底には、メタンとみられる物質がぶくぶくと多量にわき出ている場所が見つかっている。不思議な現象だ。
そもそも冷湧水やメタンはどうやって作られ、なぜ海底にわき出てくるのか。南海トラフ海底の謎に迫るには、海底のさらに下を探る必要がありそうだ。
建造が進む大型科学掘削船「ちきゅう」と高知大に完成した「海洋コア総合研究センター」こそ、その最前線基地。大掛かりな海底掘削で、南海トラフの内部にメスが入ろうとしている。
(社会部・高橋 誠)
=第一部おわり=
【写真】2月に開かれたシンポジウム「南海トラフの生物と地質」(高知市曙町2丁目の高知大)
(2003年5月21日付朝刊掲載)
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