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南海トラフ―室戸沖深海底を探る―
第1部・暗黒の溝 【6】
黒潮の流れが調査阻む
 記録映画にもなった室戸沖深海底の生物の世界。「先端観測ステーション」で見る世界は、日本近海の深海底の様子をあらかた表しているのだろうか。何人かの研究者に尋ねると、意外な返事が返ってきた。

室戸沖の南海トラフの海底の様子。生物の姿はあまり見られない(海洋科学技術センター提供)  ■少ない生物

 「例外的に生物が少ないのでは。もっといてもいいのだが…」

 記録映画は4年間の記録であるため、多くの生物が登場するが、ぱっと見た目の海底は確かに殺伐としている。研究者の目から見ても、1回の観察でシロウリガイやシンカイコシオリエビが数個体確認できればいい方という。しかし、深海底はそんなものではないのか。

 「相模湾や、同じ南海トラフでも紀伊半島より東側の深海底はかなり生物が豊かです。1平方メートルに30キロもの生物がいるところもあって、さんご礁よりも多い」

 そう指摘するのは海洋科学技術センターの藤倉克則・研究副主幹だ。日本近海の深海生物を調査し続けている。

 高知大学海洋生物研究センターの岩崎望助教授も「相模湾の初島沖の海底にも、海洋科学技術センターの観測ステーションがありますが、底一面に生物がいます。特にシロウリガイがぎっしり」と話し、室戸沖の少なさに首をかしげる。

 「原因ですか? うーん、それがよく分からないんです」。2人とも同じ答えだ。

 ■空白域

 それでは、室戸沖、四国沖の南海トラフの海底は、理由は分からないにしても、もともと生物が少ない場所ということだろうか。

 藤倉副主幹は「いいえ、探せばもっとたくさんの生物がいるのではないでしょうか。(海底ではないが)四国沖はこれまでにも多くの種類の深海生物が見つかってきましたから」。

 イメージがつかみにくくなってきた。生物は多いのか、少ないのか。「実は、四国沖の南海トラフ海底はあまり調査が進んでいない空白域なんです。南海トラフでも、東南海は比較的調査が進んでいますが…」と藤倉副主幹。

 「四国沖は黒潮の速い流れが影響して、調査しにくい海域。潜ろうとした有人潜水調査船の『しんかい2000』が流れで海上に吹き上げられたことがありました」

 つまり、四国沖の南海トラフ海底は生物学的にはまだ謎だらけ。藤倉副主幹は、操作がしやすい無人探査機を使って本格的な調査ができないか、検討している。

 【写真】室戸沖の南海トラフの海底の様子。生物の姿はあまり見られない(海洋科学技術センター提供)

2003年5月20日付朝刊掲載


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