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高知大学海洋生物教育研究センターの岩崎望助教授は、室戸沖深海底に設置されている「先端観測ステーション」を使い、深海生物の食物連鎖を追究してきた。
この深海底に生きる多くの生物も暗闇とはいえ、太陽のエネルギーに頼っているが、もう一つ、忘れてはならない生態系がある。
■化学合成
陸や海で普通に見られる生態系は太陽のエネルギー、光合成に依存している。植物プランクトンや植物が日光を利用して有機物を作り、増殖する。これを動物プランクトンや小型の動物が食べ、さらにそれを大型の動物が食べる。
ところが、生物の中には光がなくても有機物を作れるものがいる。メタンや硫化水素を酸化させて得られるエネルギーで有機物を作る。「化学合成」といわれる。
光が届かない深海底は化学合成に依存した生物が少なくない。シロウリガイはその代表的な存在。岩崎助教授は「シロウリガイはえらに化学合成細菌がいて、硫化水素と酸素を細菌に与える代わりに、細菌が作る有機物を分けてもらっています」と説明する。
室戸沖の南海トラフには、化学合成に必要なメタンや硫化水素を含んだ冷湧(ゆう)水が染み出ていると考えられている。
■直接採集
岩崎助教授らは2年前、無人潜水艇を使ってステーション周辺のさまざまな生物を採集。体を構成している炭素と窒素を詳しく調べた。
同じ体内の炭素や窒素でも、よく分析すると質量が微妙に異なるものが含まれている。これを同位体という。「生物は栄養を吸収する過程で、この同位体の割合が変化するので、同位体を調べれば、食べている餌の由来や食物連鎖での位置が分かります」
分析結果をグラフ化した結果、ステーション周辺の生物は大きく3群に分けられることが分かった。光合成に依存するコシオリエビやヨコエビなどのグループ。次に化学合成に依存するシロウリガイなどのグループ。注目すべきは、その中間ともいえる数値を示すスナギンチャクなどのグループがいたことだ。
ステーションからの海底映像をまとめた記録映画にも、死んだシロウリガイに、普段はマリンスノーを食べる生物が群がっている場面が収められている。「室戸沖南海トラフの深海底は、光合成に依存した生態系と化学合成に依存した生態系が交わっているところなのです」と岩崎助教授。
暗黒の溝は地球の表面と内部をつなぐ窓といえるかもしれない。
【写真】室戸沖の南海トラフのシロウリガイ(先端観測ステーションから撮影、海洋科学技術センター提供)
(2003年5月19日付朝刊掲載)
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