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普段の南海トラフの海底はどんな様子なのだろうか。地形は? 生物は? 潜水艇に乗らずとも手っ取り早く様子を見る方法はないものか。
それを実現する方法は意外に身近に存在した。水深3,572メートルの南海トラフをビデオカメラで観察できる施設が室戸市にあった。
■カメラを設置
文部科学省の認可法人、海洋科学技術センター(本部・神奈川県横須賀市)の海底地震総合観測システム室戸陸上局。同市室戸岬町の県海洋深層水研究所の隣にある。
2階建ての小さな施設。阪神大震災後の平成8年に始まった科学技術庁(現文部科学省)の「地震総合フロンティア研究」の一環で、翌年に設置された。
同センターは、室戸岬の南沖合約110キロの海底に、チタン製の棒を箱形に組み合わせた「先端観測ステーション」を沈めており、ビデオカメラのほか、流向流速計、水温・塩分・圧力計などを搭載している。
陸上局とは光ケーブルで結ばれ、途中の沖合約70キロ(水深1,400メートル)と同約100キロ(同2,200メートル)の2カ所には地震計や津波計も設置。映像やデータは陸上局を通じ、同センター横浜研究所に送られている。
■殺風景
海底の様子を見せてもらった。カメラはステーションのほぼ真下を映し出していた。普段は照明がたかれず、真っ暗闇だが、午前零時と正午の定時観測時には8分間ずつ照明が自動点灯し、海底の様子がうかがえる。
映像の一部は暗くて不鮮明だが、隅の方に白い二枚貝が映っていた。シロウリガイのようだ。ただ貝殻は開いている。
「既に死んでいます。以前はもう1個体いましたが、移動してしまいました」と、ステーションを利用して南海トラフの生物を研究する岩崎望・高知大学海洋生物教育研究センター助教授。
水温は約1.5度。それにしても海底は殺風景だ。カメラの周囲は新しい堆積(たいせき)物がほとんどなく、地肌を見る感じ。よく見ると、水中を生物の排せつ物や死がいのなれの果て、マリンスノーが流れていく。
同じく室戸沖の生物を地形・地質学的な面から研究する岩井雅夫・同大理学部助手は「この辺りの海水は結構流れが速く、秒速10センチくらい。マリンスノーもほとんどたまらない所があります」と話す。
岩崎助教授と岩井助手はこのステーションで4年間にわたって、海底の様子を観察し続けてきた。2人が語る南海トラフの世界とは、どんなものなのか。
【写真】南海トラフとビデオカメラでつながっている海洋科学技術センターの室戸陸上局(室戸市室戸岬町)
(2003年5月16日付朝刊掲載)
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