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黒潮の恵みを受け、豊かな海洋資源を誇る四国沖。最近では魚介類だけでなく、海洋深層水のように、海水そのものも注目を集めている。
ところが、世界の科学者の関心は、さらに不思議な所へ向けられている。海底だ。四国の南の海底には、水深4000メートル級の溝が走る。室戸岬の沖合百数十キロにあるこの溝こそ、科学者が熱い視線を注ぐターゲット。「南海トラフ」という。
■ 総延長670キロ
地球表層はプレートと呼ばれる厚い岩板で覆われている。日本周辺には北米、太平洋、フィリピン海、ユーラシアの4つのプレートが集まる。
南海トラフは、西日本などが乗ったユーラシアプレートの下に、南方のフィリピン海プレートが年数センチの速さで潜り込んでいる場所だ。
「トラフ」は「舟状(しゅうじょう)海盆」と訳される。舟底のようなくぼ地。プレート運動でできる溝でも、水深6000メートル以上にも達する「海溝」とは区別される。
日本近海でフィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に潜り込んでできる溝は、静岡の駿河湾北端から西日本、沖縄の太平洋岸に沿うように延びている。
南海トラフはこのうち、静岡県御前崎の南、水深3000メートル付近から南西方向、足摺岬沖の水深4800メートル付近までの総延長約670キロを指すことが多い。駿河湾北端から御前崎沖までは「駿河トラフ」と呼ばれ、足摺岬沖から先は「琉球海溝」に名が変わる=図参照。
■ 国際掘削計画
南海トラフが注目されるのには訳がある。まずプレートの境界特有の巨大地震の発生。南海地震や東南海地震が起きるメカニズムを探る重要なポイントだからだ。また、海底下には未来のエネルギー源になり得る膨大な量のメタンが眠る。さらに、地球の気象や環境の歴史を知る手掛かりや、未知の微生物が潜んでいる可能性があるという。
日米欧などは今年10月から、南海トラフなどを大掛かりに掘削する「統合国際深海掘削計画」をスタートさせる。日本は人類未到の海底下7キロという地球深部を掘削する大型科学掘削船「ちきゅう」(57,500トン)を建造中だ。
加えて、掘削した試料(海洋コア)を専門に保管、分析する世界唯一の施設「高知大学海洋コア総合研究センター」が今春、南国市の同大農学部キャンパス内に完成。今月24日には完成披露式が行われる。
海洋地質学の権威で、海洋科学技術センター(本部・神奈川県横須賀市)地球深部探査センター長、平朝彦博士は南海トラフをこう表現する。「地球のダイナミックな営みが世界で一番見られる場所―」
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「南海トラフ―室戸沖深海底を探る―」は、海洋コア総合研究センターの完成に合わせ、南海トラフの神秘の世界を紹介する。第1部「暗黒の溝」は、闇に覆われた海底面の様子や、そこでの生物の営みなどに迫る。(社会部・高橋 誠)
(2003年5月15日付朝刊掲載)
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