5学部6研究科体制でスタートする新高知大に新味を感じない人もいるだろう。高知大の4学部4研究科と高知医大の1学部1研究科はそのまま。存廃問題が浮上している教育学部も当面は現行組織で維持される。
統合で研究範囲が広がるわけではない。関係者も横滑りの組織体制には「統合効果」は口にしない。“縫い合わせ大学”との見方もあろう。
しかし、6つ目の研究科として来春新設される見通しの「黒潮圏海洋科学研究科」は違う。関係者もこの組織だけは明確に統合効果を強調する。
最大の統合効果
「私が10年ぐらい考えていたことが、実現できてすごくうれしい」
今月19日。両大の統合協議会終了後の会見で、“生みの親”の山本晋平・高知大学長は感慨深げに話した。
同研究科は博士後期課程。既存の学部や修士課程の積み上げではなく、全学的な独立研究科だ。
研究対象は東南アジアから東アジア、日本に広がる黒潮流域。資源、環境・社会、医学・健康の側面から、熱帯から冷温帯までの流域圏生態系や海洋環境の保全と悪化環境の改善、新しい医薬品につながる海洋生物由来分子などを幅広く探る。
最大の特長は、理学や農学、人文社会科学、医学の研究者が全学的に結集し、黒潮圏の水圏・陸圏・大気圏を総合研究する点。高知大農学部の深見公雄教授も「統合が大きなきっかけになった」と認める。
黒潮関連の高等教育研究機関は国内に東大海洋研究所など5施設があるが、同研究科が有機的に機能すれば、世界的な研究拠点になる。
「いつか21世紀COE(卓越した研究拠点)プログラムのプロジェクトを立ち上げたい」。深見教授の言葉は大風呂敷ではない。
国際計画の拠点施設
新高知大が世界に誇る“宝物”は同研究科だけではない。高知大から受け継ぐ海洋コア総合研究センターもそうだ。
日米主導の国際学術探査「統合国際深海掘削計画」(IODP)で、海底掘削試料(海洋コア)の保管・計測・分析・応用研究を担当する拠点施設。安田尚登センター長は「計測や応用研究など単独の機能を持つ施設は多いが、一つの流れでできるのはここだけ」と胸を張る。
海洋コアの研究で、地球環境の変遷や巨大地震発生帯、地下生物圏などの解明が期待される。
県民には縁遠い施設にも思えるが、別の役割もある。地域との連携だ。
国際的な研究施設に位置付けられた同センターだが、そもそも高知大は地域連携を視野に入れた施設を構想していた。その考えに変わりはない。
例えば、土佐湾沖の堆(たい)積層には微生物がつくる大量のメタンガスが氷に閉じ込められて形成されたメタンハイドレートが眠る。海底の泥には未知の地下圏微生物がすむ。こうしたエネルギー資源、バイオ資源は、地域産業や日常生活に深くかかわる。同センターは黒潮圏海洋科学研究科と連携しながら、こうした研究を推進していく。
安田センター長は「センターはIODPの終了とともに役目を終える施設でも、研究論文を書くための資料室でもない。研究を地域産業に生かす原点を重視していきます」と力を込めた。
【写真】IODPの拠点施設となる海洋コア総合研究センター。倉庫には世界中の海底から掘削した海洋コアが保管される(南国市物部の同センター)
新大学の大学院 統合時の大学院は、人文社会科学研究科(修士課程)、教育学研究科(同)、理学研究科(博士前期課程、博士後期課程)、医学系研究科(博士課程、修士課程)、農学研究科(修士課程)。法人化する16年4月に黒潮圏海洋科学研究科(博士後期課程)が新設される見通し。
(2003年9月28日付朝刊掲載)
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