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2月10日。佐賀県の佐賀競馬場で行われた「佐賀記念」前夜。
中央競馬や各地のエース馬が集まる馬房の脇には豪華な観光バスのような馬運車が並んだ。中央競馬の馬たちは冷暖房完備のその豪華なバスで、1頭ずつ運ばれてくる。
その横に、幌(ほろ)馬車のような小さなトラックが1台。「高知」と書いてある。トクさん=徳留康豊さん(43)=の相棒、エイシンドーサンのトラックだ。
ドーサンは、もともと中央競馬の馬だった。中央の水が合わなかったのか調子が上がらず、高知競馬に移ってきた。高知の仕事師は、そのドーサンをせっせと磨き上げて、再び中央に挑みかかっていく。
「なんか無謀で、むちゃくちゃで、かっこええなあ。侍やなあ」
取材班の若いカメラマンは恍惚(こうこつ)とした顔になって、「豪華バスと幌馬車」を写している。
「金で言うたら、野球のメジャーとマイナー、レコード業界のメジャーとインディーズ(自主制作)ぐらい違うもんなあ。それに本気の勝負で向かって行くんやから。好きやなあ」
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確かに中央競馬と高知競馬はメジャーとインディーズほども違う。
例えば中央の騎手の稼ぎは、武豊さんらトップ級になると手取り賞金だけで1億円を優に超える。
レース賞金は一番安くても510万円。勝敗に関係なく1レースにつきもらえる騎手の騎乗手当は4万円から8万円。乗る回数さえあれば、めったに勝てない下位クラスでも年収1000万円を超える。
一方、高知競馬のレース賞金は最高の県知事賞で250万円(交流レースの黒船賞を除く)。安いレースになると11万円。騎手の騎乗手当は、わずか4500円。エース級の騎手ですら年収600万円台。
馬をレースに出すともらえる出走手当も同様で、中央は36万円から42万3000円。高知は4万7000円。
ほか、馬房を見て分かる違いだけでも、まず馬体が違う。馬の食べる飼い葉の香りが違う(中央競馬の馬の飼い葉はぷんぷんにおってくる)。馬の飲み水が違う。騎手が乗る鞍(くら)の質が違う(中央騎手の鞍は座る位置に尻の型ができるらしい)、騎手のブーツが違う…。
「黒船賞で中央競馬の騎手がごみ箱に捨てていったブーツを、高知の騎手が拾い出して直してはいちゅうき」とトクさん。
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では地方の騎手や馬が歯が立たないのかというと、前回紹介したように地方騎手は数少ない「抜け道」を生かし、中央を荒らし回っている。
地方所属の馬がわずかのチャンスを生かして中央のGIレース(最も大きなレースの部類)に乗り込んで勝ったこともある。
もちろん交流レースで地方馬が勝つことは珍しくない。5年前の白山大賞典(金沢競馬)は高知競馬の鷹野宏史騎手のマルカイッキュウがクビ差で2着。同じ年の黒船賞は北野真弘騎手のリバーセキトバが優勝した。
金のない「侍」たちは、中央の足元をすくってやろうと狙っている。
2月11日。7400人で膨れ上がった佐賀競馬場は、暮れの笠松と同じ、雨上がりの馬場になった。
【写真】各地から集う馬運車。エイシンドーサンの馬運車(右)だけが際だって小さい(2月10日、佐賀競馬場)
(平成15年3月28日付夕刊掲載)
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