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「みんな同じ騎手で免許持っててよ。中央競馬にゃ絶対乗れねえ…。なんのための免許だよ!」
名古屋市のスナックでカウンターをドン! とたたいて嘆いたトクさん=徳留康豊さん(43)。中央競馬と地方競馬の交流が進んでいるにもかかわらず、なぜ高知の騎手は、中央競馬で乗れないのだろうか。
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詳しく説明すると長くなるが、要するに高知競馬にはJRA(日本中央競馬会)が定めた「認定レース」がないからだ。
認定レースというのは平成7年に始まった制度で、各地方競馬ごとに行われる2歳新馬のレース。これに勝てば、中央競馬の「特別指定交流レース」にこまを進めることができる。
「特別指定交流レース」に騎乗する地方騎手は、JRAからこの日だけの「1日免許」をもらうことができる。ただ免許の効力は丸1日あるから、中央競馬の調教師から騎乗依頼さえあれば、その日の他のレースにも出走できる。
この仕組みを生かし、地方のトップ騎手たちが中央のビッグレースを次々にさらっている。連載第1部で紹介した岐阜県・笠松競馬の安藤勝己騎手(2月に中央競馬に移籍)はその筆頭だ。
悪条件の馬や馬場でしのぎを削っている地方騎手は、中央騎手より勝負強いとすらいわれる。平日は地元で、週末は中央に打って出る。「攻める時代」になってきた。
ところが高知競馬にはそれがない。2歳で入る新馬の頭数が少ないため、認定レースの資格が得られないからだ。頭数を増やせば取得は可能だが、馬主の経済力が弱いうえ、主催者の県競馬組合に気概がない。
認定レースがないのは高知競馬と、独自の判断で導入を拒んでいる大井競馬(東京)だけ。結果、挑む機会すらない。
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1月。高知競馬のエース騎手の1人だった北野真弘さん(33)が兵庫の地方競馬、園田競馬に移籍した。賞金額の減少で生活の先行きに不安を感じたことと、「高知からは中央に行けない」ためだった。
その北野さんが去り際、こう言った。
「僕はトクさんをずっと目標にして、トクさんを横に見ながら走ってきた。そのトクさんが43歳で頑張っている。だから僕も、まだまだ。まだトクさんを抜けてないと思うし、抜くまで走り続ける」
後輩を見送った後、トクさんも悩み始めた。
「おれも、このままでいいのかなあ」
生活はどっちみち苦しい。これから賞金はもっと下がるかもしれない。
けがで動かなくなっていた左手の小指と薬指は手術でどうにか回復したが、最近は腰が痛む。痛み止めを注射して乗る日が増えた。年齢を考えれば、残りの騎手生命は限られている。
「認定レースのある県外に移ろうか。最後のチャンスかもしれない」
県外交流レースで一緒に走っているエイシンドーサンが、背中を押してくれている気がしないでもない…。
冬から春、トクさんも揺れていた。
【写真】高知での最後のレースを走り終えた北野騎手(左)がトクさんと握手した。「園田行ったら、目立つ乗り方せえよ」とトクさん(1月4日、高知競馬場検量室)
(平成15年3月27日付夕刊掲載)
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