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「ドーサン、あいつ、いかすって」
昨年11月26日夕、名古屋空港。岐阜県・笠松競馬場での「全日本サラブレッドカップ」を終えたトクさん=徳留康豊さん(43)=は高知行きの飛行機を待ちながら、エイシンドーサンを褒めた。
スタートはしんがりだった。ぽつんと1頭、集団から離れた。それでも4コーナーで一頭をかわし、最後の直線でもう1頭をかわし、さらにぐんぐん伸びて、名古屋競馬の馬に体を併せたところでゴール。10頭中の8着だった。
レース後、厩務(きゅうむ)員の桑名政男さんは、ほっとした顔で言った。
「相手が相手やし。まあ、褒めちゃらなあ、いくまい」
馬主の木村都さん=大阪市=が小走りに来て、顔を上気させた。
「もう、頭下がりますわ。見てよあの体、がりがりよ」
連戦と長旅。ドーサンは、やせてあばらが浮いていた。
「徳留って子、すごいわねえ。あの追い方。中央競馬の騎手、負けレースであんなに追ってくれないわよ。あの子、ゴール板過ぎても追ってたわ」
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それでもトクさんは悔やんでいた。
最後方から少しずつ前へ出て、先行集団がつぶれるのを待って、1着でも前へ前へ馬を押す…。そのつもりだった。
ところがゲートを出ると、ほかの馬のスピードが違う。やはり実力が違う。「弱気」の虫がよぎったのが、そんなとき。
「おれ、このままじゃ20馬身差の最下位だと思って、2コーナーで、ドーサンに息を入れさせた。呼吸を整えさせた。それなりの競馬をしようって思ったんよ」
最後で解き放ったドーサンの脚は、予想外の伸び、粘り強さだった。
「あいつ、ゴール過ぎても脚残してた。まだ余力あった。あと50メートルあったら、あいつ、前に来てた」
「ドーサンは変わり馬」。レース前、トクさんはそう言っていた。
「でも違ったわ。あいつは変わっているんじゃない、遠慮深いがっちゃ。本当の底力はすげえんだって。それを生かせなかったのが、おれや」
「坂本(敏美騎手)さんならよう…」。缶ビールをぐいっとあおる。
「兄貴だったらよう、多分、1400メートルを追いっぱなしで走ったんじゃないか。こいつの脚は動くんだって、最初から信じて走ったんじゃないか。兄貴なら4着あったかもしれん。行きっぱなし、追いっぱなしでよかったがよ」
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夕暮れ。高知空港に着いたトクさんは、一緒に帰っていた調教師の竹内昭利さんに水を向けた。
「先生よお、もう1回勝負しようぜ。1400メートルじゃ距離が足りんのよ。1800か、2000やないと」
竹内さんが、うん、うんとうなずいた。
「佐賀記念狙うで。選ばれたらの話やけど。2000メートルや」
佐賀記念は2月。今からなら、馬はじっくり余裕をもって仕上がる。
「すっきりしたい」
トクさんがそう言った。
【写真】レース後、泥だらけの顔を洗ってもらうドーサン。この後、馬運車で高知へ(昨年11月、岐阜県の笠松競馬場)
(平成15年3月22日付夕刊掲載)
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