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「高知競馬」という仕事
     =第4部= 神様を追いかけて
 【8】

 「佐賀行こうぜ」  ――調教師「選ばれたらの話やけど。佐賀は2000や」

 「ドーサン、あいつ、いかすって」

 昨年11月26日夕、名古屋空港。岐阜県・笠松競馬場での「全日本サラブレッドカップ」を終えたトクさん=徳留康豊さん(43)=は高知行きの飛行機を待ちながら、エイシンドーサンを褒めた。

レース後、泥だらけの顔を洗ってもらうドーサン。この後、馬運車で高知へ(昨年11月、岐阜県の笠松競馬場)  スタートはしんがりだった。ぽつんと1頭、集団から離れた。それでも4コーナーで一頭をかわし、最後の直線でもう1頭をかわし、さらにぐんぐん伸びて、名古屋競馬の馬に体を併せたところでゴール。10頭中の8着だった。

 レース後、厩務(きゅうむ)員の桑名政男さんは、ほっとした顔で言った。

 「相手が相手やし。まあ、褒めちゃらなあ、いくまい」

 馬主の木村都さん=大阪市=が小走りに来て、顔を上気させた。

 「もう、頭下がりますわ。見てよあの体、がりがりよ」

 連戦と長旅。ドーサンは、やせてあばらが浮いていた。

 「徳留って子、すごいわねえ。あの追い方。中央競馬の騎手、負けレースであんなに追ってくれないわよ。あの子、ゴール板過ぎても追ってたわ」

   □────□

 それでもトクさんは悔やんでいた。

 最後方から少しずつ前へ出て、先行集団がつぶれるのを待って、1着でも前へ前へ馬を押す…。そのつもりだった。

 ところがゲートを出ると、ほかの馬のスピードが違う。やはり実力が違う。「弱気」の虫がよぎったのが、そんなとき。

 「おれ、このままじゃ20馬身差の最下位だと思って、2コーナーで、ドーサンに息を入れさせた。呼吸を整えさせた。それなりの競馬をしようって思ったんよ」

 最後で解き放ったドーサンの脚は、予想外の伸び、粘り強さだった。

 「あいつ、ゴール過ぎても脚残してた。まだ余力あった。あと50メートルあったら、あいつ、前に来てた」

 「ドーサンは変わり馬」。レース前、トクさんはそう言っていた。

 「でも違ったわ。あいつは変わっているんじゃない、遠慮深いがっちゃ。本当の底力はすげえんだって。それを生かせなかったのが、おれや」

 「坂本(敏美騎手)さんならよう…」。缶ビールをぐいっとあおる。

 「兄貴だったらよう、多分、1400メートルを追いっぱなしで走ったんじゃないか。こいつの脚は動くんだって、最初から信じて走ったんじゃないか。兄貴なら4着あったかもしれん。行きっぱなし、追いっぱなしでよかったがよ」

   □────□

 夕暮れ。高知空港に着いたトクさんは、一緒に帰っていた調教師の竹内昭利さんに水を向けた。

 「先生よお、もう1回勝負しようぜ。1400メートルじゃ距離が足りんのよ。1800か、2000やないと」

 竹内さんが、うん、うんとうなずいた。

 「佐賀記念狙うで。選ばれたらの話やけど。2000メートルや」

 佐賀記念は2月。今からなら、馬はじっくり余裕をもって仕上がる。

 「すっきりしたい」

 トクさんがそう言った。

 【写真】レース後、泥だらけの顔を洗ってもらうドーサン。この後、馬運車で高知へ(昨年11月、岐阜県の笠松競馬場)

平成15年3月22日付夕刊掲載


【続き】

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