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17年前、一人のジョッキーが名古屋競馬から高知競馬に流れてきた。
九州と名古屋のなまりが交じった、ちょっと気の強い兄ちゃん。やんちゃでざっくばらんで、高知の水に溶け込んだ。
太い二の腕で手綱をさばき、馬を操った。今は行くな、ここで息を入れろ。さあここから追っていけ―。馬を従わせ、脚をため、最後の直線で爆発させた。「よーいドンで追わせたら一番」と言われた。
目立った。高知に来た26歳から6年間続けて年間の勝利数1位。高知出身の若手たちが台頭してきた今も一目置かれる。土佐弁が染みついた。
高知競馬場のメーンレース。煮染めた服のおじさんたちが、パドックを見ながらわいわい言っている。
「トクやきねや。(2着以上に)持ってくるかもねや」
高知競馬場に通い詰める居酒屋の店主は、大学時代に名古屋競馬に入り浸っていた。
「あのころから見て知っててね。ずっとファン。例えばそれなりの馬で、4コーナーを回ってきて、トクが一馬身遅れとする。オッケー、もろた。もう安心。追い比べだったら、誰にも負けんだろ」
徳留康豊さん(43)。愛称「トク」。おいおい紹介するが、私たちが勝手に付けた通称は「なーんちゃってのトク」。「最後の直線でぐわっと追ってくる」スタイルは、今も昔も変わりはない。
高知競馬は14年度、出走手当やレース賞金などの「賞典奨励費」を年間総額で約3割下げた。この4月以降、さらに1割近く下がる。
このままの賞金が続くなら、どう転んでも生活は苦しい。
徳留さんは昨年11月末、高知競馬の1頭の差し馬と岐阜県・笠松競馬場で開かれたビッグレース「全日本サラブレッドカップ」に乗り込んだ。
この連載第1部で紹介した「エイシンドーサン」。躍り込むように最後で伸びてくる追い込みの脚は、「まくりのトク」と相性が合う。
本当はドーサンも苦しい。すでに9歳。10月末と11月初旬に2週間間隔で高知競馬に出て、その2週間後、小さな馬運車で深夜の高速道を駆け、笠松競馬に乗り込んだ。
さらにことし2月、佐賀競馬の「佐賀記念」に、立て続けのなぐり込み…。
1着賞金3000万円。賞金のいいレースに挑まねば、人も馬も生きていけない。
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「しっかしよ、おれがレース終わってよ、こんな顔になったのよ、初めてだぜ。笑かすぜ。笑かす笑顔だぜ」
笠松でのレース直後の写真を見たトクさんは、そう言った。
トクさんは「神様」を追いかけて走っていた。
流れ騎手の物語と、彼と相棒ドーサンの、冬から春の大勝負をたどりたい。
【写真】レース直後のトクさん。ドーサンとは昨年5月からコンビを組んでいる(昨年11月、岐阜県の笠松競馬場)
(平成15年3月12日付夕刊掲載)
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