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「なんで新聞が先に廃止を知ってて、僕らは知らないんですか? なぜ競馬で生活している僕らには知らされなかったのですか?」
大分県・中津競馬の騎手だった杉村一樹さん(24)は顔をゆがめた。
新聞で突然の廃止を知ったのは13年の2月。3月31日朝には厩舎(きゅうしゃ)団地に突如、「集会所に集まって」という放送が響いた。
杉村さんはいつも通りに攻め馬をしていた。集会所に行くと、市の職員がこう通告した。「明日の開催は休止します」――。
「どういうことだ! 6月まではやるはずじゃないか!」「市長は出て来んのか!」
あまりに一方的な市の姿勢だった。
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杉村さんは本県の中村市出身。子どものときから動物好きだった。中村中学校を卒業するころ、幡多郡大方町にある競走馬の保養センターの仕事を手伝い始めた。
同センターは、各地の故障馬を一時的に預かる「馬の治療所」。海水浴調教などで脚の具合を治し、再びレースに復帰させる。
杉村さんはそこで馬の世話を教わり、島根県の益田競馬場に移った。馬の乗り方を覚え、16歳で騎手学校へ。調教師との出会いが縁で、卒業後は中津競馬の騎手になった。
「中津で順調に勝てよったんです。中津の後に益田も廃止なんて…。中津時代の先生(調教師)も、今は土木関係の仕事です」
不安の中、騎手学校時代の同期のつてで、荒尾競馬から声が掛かった。
「今の先生が『うちに来んか?』って。僕は中村やけん、高知競馬に行きたかった。けんど(高知は)微妙な返事やったんです。親やばあちゃんにも僕のレース、見てもらいたいに…」
結局、荒尾に移籍した。再デビューは中津競馬の廃止から4カ月後の13年8月。「来た以上、荒尾がつぶれん限りここで乗るつもり。いつか、高知のレースにも出たい」
昨年2月、地方競馬のアイドル的存在だった元女性騎手、小田部雪さん(26)と結婚した。廃止された中津競馬から一緒に移籍し、腕を競った同僚だった。
「あいつ、調教中に落馬してけがしたんですよ。入院がきっかけで引退です。『もう馬に乗るのは怖い』って。でも『馬にはずっと触っていたい』って…」
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高知競馬をめぐり、「競馬の負債に公金を投入するなんて」という声がある。
しかし、競馬を経営してきたのは騎手でも調教師でもない。行政が自ら経営し、自ら借金を膨らませたにすぎないのだ。行政がつくった事業で、行政がつくった借金は、行政の責任で埋めなければならない。
つまり、責を問われるべきは行政であって、仕事師たちは被害者でしかない。それがいつの間にか、「公金を投入してあげましょう」と論理を逆転させる欺まん…。
杉村さんら仕事師たちの心情が、行政には見えているのだろうか。
社会部 小林 司
写真部 佐藤邦昭
=第3部おわり
【写真】中村市出身の杉村騎手。高知競馬に移籍を希望したが結局、荒尾に移った(熊本県の荒尾競馬場)
(平成15年2月10日付夕刊掲載)
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