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熊本県荒尾市。荒尾競馬組合の松尾孝総務課長は、笑みを浮かべて言った。
「13年度が初めての赤字です。荒尾はこれからが正念場ですよ」
廃止された大分県・中津競馬から騎手6人を受け入れた荒尾競馬の経営は、予想外の健闘を見せていた。
有明海が見える埋め立て地に延びた白い砂のコース。高知競馬の発祥は明治19年とされるが、荒尾競馬も大正15年と古い。
荒尾市は人口約5万6000人。かつてはお隣、福岡県大牟田市に三池炭鉱があることで競馬もにぎわった。
荒尾競馬には22人の騎手と25人の調教師がいる。これは高知競馬とほぼ同じ。年間売り上げは高知が約119億円(平成14年度末見込み)、荒尾は約86億円(13年度)で、高知の方が多い。
ところが、荒尾競馬の累積赤字は意外なほど少ない。同課長によると、13年度に初めて4億5000万円の赤字が出たという。
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荒尾が楽な経営をしているわけではない。三池炭坑の閉鎖は9年だった。多くの人が街を離れた。
「閉鎖の途端、売り上げが一気に8%も落ちました。今では、夜の街も寂しいもんです」
以降も売り上げダウンは続いた。にもかかわらず、荒尾競馬は赤字を多くは出さなかった。
「実質では10年度以降が赤字ですが、財政調整基金を10億円以上積み立てていたんです。それを取り崩してしのぎました。もう一つ、現在の競馬場は昭和40年代の建設ですが、高知競馬さんと違って施設借り上げ料がないんです」
高知競馬の場合、施設建設費の償還などに充てるため、競馬組合が土地賃貸料などとして年に約3億7000万円も支払っている。それがないのは荒尾の大きなメリットだった。
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ただし荒尾は経営努力も続けている。まず3年前、佐賀、荒尾、中津で「九州競馬構想」を打ち出した。
「3場を合わせた約1600頭の馬で魅力あるレースを行う発想です。中津はその矢先に廃止されましたが、わずかながらも売り上げ減に歯止めがかかった」
8年前から中央競馬のG1レースも発売。地元競馬の売り上げはかなり減るが「地元と同時開催の日は普段の3倍の人が来る」。今は岩手県の盛岡競馬とも場外発売で交流し、「M&K(みちのく・九州競馬)」「九州馬力」をPRする。
「14年度は1億円以内の赤字で抑えられそう。従来通りの運営なら、年間で7億円から10億円の赤字だったでしょう」
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あれやこれやと工夫を重ね、「冬の時代」を耐える荒尾。片や累積赤字が88億円に上る惨状に陥った高知競馬。「アリとキリギリス」――。その違いは、経営努力としか言いようがないのではないか。
小さな自治体ゆえに荒尾は努力した。高知競馬を主催する高知県と高知市はその逆。経営悪化の責任を取る者は県にも市にもおらず、無責任体制の中で赤字だけが膨らんだ。
高知競馬もせめて5年前に本格的な再建への一歩を踏み出せば、こうはなっていなかったに違いない。
【写真】有明海に面した荒尾競馬場。馬たちが白い砂をけっていた(熊本県荒尾市)
(平成15年2月8日付夕刊掲載)
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