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昨年秋、私たちは宿毛市からフェリーで九州に渡った。
地方競馬廃止の先陣を切った大分県中津市の中津競馬場は影も形もなく、荒れ野が広がっていた。
競馬場と対照的に、同市内に造られた場外馬券売り場は同じ九州の佐賀競馬に引き継がれて存続している。意外にも、その施設は中心市街地の大型ショッピングセンター内にあった。
地方競馬初のショッピングセンター立地型場外馬券売り場「ドリームなかつ」。洋服や靴などの売り場が続くショッピングセンターの一角に、モニターテレビが幾つも並ぶフロア。
買い物客が行き交う通路脇で予想紙が売られ、警備員が立っている。明るいフロアの中に大勢のおじさん、おばさん、お父さん…。買い物がてらいすに座ってわいわいやっている。
「中津競馬も、うまくやればまだやれたのに。高知競馬も大変なんですか? 高知には中西くん(中西達也騎手)がいるねえ。元気かな。彼は昔、中津の騎手やったけん」
こう話すのは、入り口で予想紙を売っていた山田実さん(59)。
中津競馬の予想紙の一つ「競馬ファン中津」を発行していたが、平成13年3月の同競馬廃止と同時に廃刊。島根県益田競馬の「シーさん」と同様、現在は場外馬券売り場で佐賀競馬や荒尾競馬(熊本県)など他場の予想紙を売っている。
「中津の廃止はひどかったですよ。朝起きて新聞見たら『中津競馬廃止』なんて…。こっちはびっくりです。翌日に開催するはずの予想紙を刷り上げて、コンビニに配達してたんですから!」
中津競馬の廃止の話になると、山田さんの表情は変わった。「寝耳に水だった」と憤る。
「一定期間、存廃を検討するならまだいいですよ。中津は全くの突然だったんです。みんなが路頭に迷って、市は『金は1円も払わん。就職先をあっせんする』ですから。相手の生活のことなんか、考えてなかったけん」
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中津競馬組合の管理者だった市長が廃止を表明したのは13年2月。それからわずか1カ月余りで中津競馬は廃止に追い込まれた。
最後の開催も悲惨だった。
当初の予定では6月まで競馬が開催されるはずだった。ところがレースの着順判定を行う写真業者との新年度契約ができなかったため、急きょ3月限りで打ち切られてしまった。
「だから中津はお別れレースもないんです。刷り上げた4月1日付の予想紙も幻になってしまった。その上、みんなが厩舎(きゅうしゃ)団地を追い出されて、1円の生活補償もない。話にならんよ。そういえばちょうど、いい人が来てるよ」
山田さんが指さす向こうに、補償問題をめぐって中津市と闘いを続けた人がいた。
【写真】施設が取り壊され、更地になった旧中津競馬場跡(大分県中津市)
(平成15年2月4日付夕刊掲載)
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