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「せっかくですから見ていってくださいよ」
閑散とする益田競馬場を、益田市競馬事務局の職員が案内してくれた。
売り場や通路に、いろんな物が置かれたままになっていた。開催日が記されたベニヤ板の大きな看板、出走馬の名前を紹介する手書きの大型ボード、馬券発売に使った電算機器…。
「ほとんどが職員と従事員の手作りですよ。休憩室の畳やテレビだって従事員の持ち寄り。電算機もよその競馬場の払い下げです。とにかく、経費はぎりぎりまで切り詰めていました」
人件費も同様だった。馬券の発売窓口などで働く従事員は全員がパート雇用。それも、パートの雇用最低賃金の時給600円。
レース賞金や手当などの「賞典奨励費」も限界を超えて切り詰めていた。騎手たちが命を張って1着を取ってもわずか数千円しか稼げない。大半のレースは、そんな構図だった。
「それでも踏ん張ろう。わしらにはこの道しかないんじゃけ」
騎手をはじめ、関係者は耐えた。世間に不況風が吹くなら、なおさら耐えるしかなかった。
だが、赤字は続いた。ここ数年は毎年、1億から2億円台の赤字。限界を超えた切り詰めが、兵糧攻めのように効いた。年配の関係者には、気力をなくしていく者も出始めた。
「キャンペーンやファンサービスもいろいろ工夫したんですが…。益田の周辺には競合する公営ギャンブルはないんです。競合相手もいないのに駄目なら、もう仕方ないと。市の財政圧迫はできない、と…」
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益田競馬の経費削減は、地方競馬を主催する全国の自治体から“お手本”とされてきた。その破たんは、実は経費削減が特効薬とはならなかったことも意味している。競馬関係者の一人が言う。
「益田でさえ廃止なんです。経費の切り詰めだけでは先は見えているということではないでしょうか。ほかの手だてが必要なのではないでしょうか」
同競馬は、場外馬券売り場を益田市内に1カ所設けていた。「市外に造るとなると市の力だけでは難しかった。経営努力が足りなかったと言われれば、それはあります」と市競馬事務局。経費を限界まで切り詰める現状では、新たな投資はままならなかった。
市職員の一人が言う。
「単純計算すると、1日に2800万円も売れれば収支がトントンだったんです。しかし、ここ数年は1日2300万円しか売れませんでした」
差額は一日500万円。どうすることもできない額だったのだろうか…。
「だから『惜しい』という気持ちはあります。最後の日の人出を思えばなおさらです」
職員は、正直に残念がった。残念がりながら、高知のことも口にした。
「高知競馬さんも今は厳しいでしょう。高知さんの今の賞金額は益田とほぼ同レベルですから。ただ、高知は1日8000万円くらいは売れてますよね。運営規模は違うにしても、それでやれないものかなあ…」
【写真】開催日程を記したボードも従事員らの手作り。経費はぎりぎりまで切り詰めていた(島根県の益田競馬場)
(平成15年2月1日付夕刊掲載)
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