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入場者数4621人、売り上げ約6200万円――。
昨年8月16日。島根県益田市の益田競馬場は、55年の歴史の中で最多の入場人員を記録した。
この日は同競馬最後の日だった。
「それまでの入場記録は3900人だったんです。とにかく人が来てくれた。1000人来れば上々の競馬場に…」
同市競馬事務局の山田建男さんが振り返る。
午前11時半の第一レース前からファンがどんどん入場した。スタンドもパドックも人、人、人、人、人…。午後に入ると、「日本一小さな競馬場」は居場所が見つからないほどの人で埋め尽くされた。
超満員の中、一つ、また一つとレースが進んでいく。真夏の熱気と人波の中、場内に立つ予想屋の一人は「この半分も入れば、益田は十分続けられたのになー」とぼやいた。
そして…。ついに最終レース。
レース名は「益田競馬ラストラン特別」だった。正真正銘、これが最後。人で埋まったスタンドに、異様な空気が漂っていた。
さあ、スタート!
山田さんが言う。
「どう表現したらいいのか、すごい雰囲気でした。馬が4コーナーを回り始めたとき、地響きのような歓声がして…。直線に入ると『うおおーっ!』という何とも言えない大音響です。もう、買った馬券が当たろうが当たるまいが関係ないという感じ。震えました」
このレースの一着賞金は15万円だった。競馬の賞金は馬主、騎手、調教師、厩務(きゅうむ)員で分配する。騎手がもらえる分は5%だから、一着を取っても騎手の懐に入るのはわずか7500円。高知競馬同様、益田競馬も「賞典奨励費」を限界以上に切り詰めていた。
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最後のレースが終わっても、多くのファンは帰ろうとしなかった。
やがて、地元の騎手全員が馬に乗ってスタンド前にやってきた。騎手たちはスタンドにむちやゴーグルを投げ入れた。写真撮影やサインにも応じた。
ファンは泣いた。コースの中に入り、「お疲れさま」と騎手たちに声を掛けた。場内に「蛍の光」のメロディーが流れた。
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「昔、たくさん馬を飼っていた土地柄からでしょうね。住民アンケートでも『益田に競馬場があっていい』という声は多かったんです。でも、当市の財政規模では限界だった。小さいのに、よく55年も続いたものだと思います」
山田さんが、うつむいた。
益田競馬の廃止を、益田市は「休止」と表現している。将来に再開の可能性を残す意味だが、職員の一人はこう漏らす。
「『将来、再開できるような状況になれば』ということです。ですが、益田も市町村合併を控えている。『お荷物は処理した上で合併』ということになるでしょう。再開の可能性は限りなくゼロに近いです」
【写真】廃止後のスタンド。「最後の日」は過去最多、4600人のファンで埋まった(島根県の益田競馬場)
(平成15年1月25日付夕刊掲載)
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