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須崎市の銭湯「錦湯」 唯一の番台守る橋本夫妻
須崎市内に1軒だけ、昔ながらの銭湯が営業を続けている。同市浜町1丁目の「錦湯」。経営するのは橋本悟さん(71)と忠子さん(67)夫妻。決してもうかる仕事ではないが、「ここがなくなったら困る客がおる。やめるにやめられない」。かつてのようなにぎわいはなくても、銭湯の風情と人情は今も健在だ。
木のロッカーに古びた鉄の体重計、小さなテレビ。脱衣所に入ると、タイムスリップした感じになる。
「古いろう。建物は築72年ばあ」。番台に座る悟さんが笑う。「錦湯」は忠子さんの祖父が昭和初期に施設を買い取って始め、父から婿の悟さんへと受け継がれた。
「昔は風呂場にひしめき合うぐらいの客がいたし、外で待ってもらうこともあった」と、小学生のころから手伝ってきた忠子さん。当時は市内に12、3軒の銭湯があったという。
今、「錦湯」の客は多い時で1日30人ほど。一人暮らしの年寄りや独身者が中心。「『姿が見えなくなったな』と思ったら亡くなってたり、病院に入ってたり。これからも客は増えることはないろう」(忠子さん)。
入浴料は大人330円で、経費を引けばもうけはほとんどない。「いっそほかに立派な施設ができてくれれば」とも思うが、2人は「ここがなくなったら困る客がおる。やめるにやめられん。休めん」と口をそろえる。
午後3時。営業開始とともに、ぼつぼつと客がやって来る。「今日はどうしよった」「病気は治ったかえ」。お年寄りに声を掛ける忠子さん。パッと服を脱いで湯船につかり、ものの10分ほどで出てきた70歳代の男性は、「たっぷり湯はあるし、きれいやし。申し分ないわ」と満足げ。「家に風呂ない。ここがなくなったら? そりゃ困る。たちまち困る」
のんびりと湯につかっていた50歳代の男性も「銭湯も少なくなって寂しい。ここは何とか残ってほしいけどねえ…」。ほとんどが常連客で、お互い顔なじみ。「話すだけでストレス解消になる」という。
「銭湯って、昔からそういう所よね」と忠子さん。「話しよったら私もボケんし」。悟さんも「できる限りは続けたい。体力よりは、ボイラーの寿命が心配やねえ」という。
ゆっくり温まった客は扇風機で涼む。「おやすみー」と客同士が声を掛け合い、番台で「ありがとう」が交錯する。明日もあさっても、いつまでも続いてほしい風景だ。
【写真上】笑顔で客を迎える橋本悟さん(写真はいずれも須崎市浜町1丁目の「錦湯」)
【写真下】ゆっくり湯船につかれば、体だけでなく気持ちも温まる
(2003年11月4日朝刊掲載)
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