「深層水の原水から、微量の水銀を検出した」
5月22日、県が突然の記者発表。県内の深層水産業は、それから約1カ月間にわたって“水銀騒動”に揺れた。関係者は思い出したくもないのか、話題に上る度に顔を曇らせる。
あり得ない数値の水銀検出。しかも深層水原水だけから異常値が出て、製品自体には問題がなかったのも奇妙だった。しかし、県と販売会社が行った記者会見で、製品の出荷停止と自主回収を発表した。
結局、検査会社のミスと判明したが、記者発表以後、深層水利用企業へ問い合わせが殺到。本県の深層水産業はピンチに立たされた。
県内のある食品会社の社長に当時のことを尋ねると、「もう、あの話は…」と顔をしかめる。騒動の際、取引中止におびえた記憶がよみがえるからだ。
それでも「あの騒動があって、製品管理には従来以上に気を使うようになった」と口を開いた。騒動を機に高知海洋深層水企業クラブ(71社、浅川良住会長)や県、室戸市は何度も議論を重ね、「安全性の追求が悪印象を払しょくし、ひいてはブランド確立になる」という認識で一致したという。
取水施設の水質検査を従来の3カ月に一度から毎月実施へ。利用企業にも製品の自主検査結果報告を年4回義務付けるなど、厳しい管理体制に変えた。
自主検査は来年2月から始める。年間20万―30万円程度の出費になるが、社長は「あの騒動が起きるまでは、自分の商売が良ければそれでいいと思っていた。でも、うちも騒動に巻き込まれ、何か問題があれば、業界全体に影響が出ることを痛感した」。
水銀騒動を教訓に全国レベルで見ても厳格な製造基準が設けられ、官民挙げて取り組むことになった。今後は全商品に検査基準を明記するなど、高い安全性と高品質を戦略的に訴えていくことも求められるだろう。
深層水産業は、全国で10以上の自治体が乗りだすなど競争激化が確実。本県は降ってわいた騒動を乗り越えたが、「室戸ブランド」の生き残りをかけた試練は、これからが正念場だ。
【写真】「深層水水銀騒動」の発端になった5月22日の記者会見(県庁の県政記者室)
(平成15年12月20日付朝刊掲載)
|