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「結いの里」の明日  ◆1◆

 馬路村  大人も通う中学校

生徒に交じって真剣にノートを取る岩城さん=手前=と国広さん。2人がいると、いつもの教室が違って見える(馬路村の馬路中)

 県東部、安芸市と室戸市に挟まれた五町村からなる中芸地域。人口1万4000人足らず、海と山に囲まれた自然豊かな里は今、土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線という起爆剤を得て飛躍が期待されている。手を差し伸べ合って繁栄してきたこの地域の町村の特色ある取り組みから、地域の将来像を探る。

 77歳の生徒

 「はい、今日は『古墳時代』について勉強します。教科書を開いてください」

 安芸郡馬路村の馬路中学校。先生の声に合わせて、ページをめくる音が静かな教室に響く。「古墳って何か分かりますか」。先生が生徒に問い掛ける。一見よくある授業風景だが、しかし。

 「昔の偉い人のお墓よね?」。顔を上げ、そう答えたのは国広安子さん、77歳。その前の席に座る70歳の岩城佳子さんが「勾玉(まがたま)なんかも入っちゅうで」と続ける。

 実はこの2人、5月から馬路中で1年生の社会科の授業を受けている。それも1度2度のことではない。週3時間の授業を、生徒と全く同じように受けているのだ。教える方も特別扱いは一切なし。あくまで一生徒として指導する。

 「では、気が付いたことをグループで出し合って」。2人は当たり前のように生徒と机を寄せ、あれやこれやと話し合う。生徒の1人、中島初史君は「最初はちょっと戸惑ったけど、今は平気。いろんなことを教えてくれるのが楽しい」そうだ。

 人間関係に刺激

 「熱心に勉強されてるでしょ。予習もしてこられるんですよ」と竹崎義秀校長。同校が発案したこの企画は本年度から始まり、現在30歳のお母さんから77歳までの6人が英語、社会科の授業を受けている。

 同校は全校生徒わずか29人。少人数の授業は指導が細かく行き届く半面、多様な意見が出にくいという弊害もある。「人間関係が固定化し、刺激がなくなる。特にこの村は、保育所から同じ顔触れで育っているだけになおさらです」

 竹崎校長は「学校現場を肌で知ってもらえるのも大きい」とも話す。「学校の悩みはつい学校で抱えてしまう。私たちも相談できる人がいると随分楽になる。子供には私たちが気付かない思いが必ずある。子供と大人とのいい橋渡し役になってもらえればいいですね」

 メリットは子供たちや学校だけではない。同村の清岡博之教育長は「小さい村だから、生涯学習の機会が少ない。図書館すらない。でも、人々に学習意欲がないわけじゃないですから」。そこで思い付いたのが、村内最高の教育機関である馬路中の利用というわけだ。

 授業を受けた感想はどうだろう。国広さんは「知識を身に付けるのが楽しい。そのうちテストも受けたいわ」。岩城さんも「記憶力は悪うなったけど。その分ノートはばっちり。生徒には負けんで!」と笑った。

 一見苦肉の策にも思えるこの取り組みは、子供も大人も学校も元気にする。経費だってほとんど不要。小さな村ゆえの小回りの良さで、地域に新風を吹き込んでいる。

 【写真】生徒に交じって真剣にノートを取る岩城さん=手前=と国広さん。2人がいると、いつもの教室が違って見える(馬路村の馬路中)

平成14年6月25日付朝刊掲載


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