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なはり線を起爆剤に 中芸5町村長がサミット

「第9回移動高知新聞 ふれあい高新in中芸」の一環として、高知新聞社はこのほど、中芸5町村の首長による討論会「中芸サミット」を開いた。5町村長は、土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線の開業を地域の活性化の起爆剤としなければならないとの認識で一致したのをはじめ、地域振興や市町村合併などについて活発に話し合った。
移動高知新聞では初めての試みで、斉藤一孝奈半利町長、桑名義彦田野町長、有岡正幹安田町長、寺尾幸次北川村長、上治堂司馬路村長の5氏が参加。
ごめん・なはり線の開業を「地域活性化のチャンスだ」ととらえるとともに、同線の健全経営のためにも「交流人口を呼び込める町づくりが必要だ」「中芸地域の連携が欠かせない」などの意見が相次いだ。
また、鉄道に続く基盤整備として、地域高規格道路・阿南安芸自動車道など高速ネットワークのほか、生活・産業路線としての県道の改良などの重要性を指摘。
さらに市町村合併については、各町村長とも財政状況が今後さらに厳しさを増すとの認識の下、「単独での生き残りは難しい」と指摘。合併の是非の判断に向けた住民説明用の資料作りなどを急ぐ必要性を強調した。
【写真】ごめん・なはり線の開業を機に、活性化が期待される中芸地域(田野町)
「魅力ある地域づくりを」 紙上録音
出席者 奈半利町長 斉藤一孝氏 田野町長 桑名義彦氏 安田町長 有岡正幹氏 北川村長 寺尾幸次氏 馬路村長 上治堂司氏 司 会 高知新聞社政治部長 遠山仁 |
「ふれあい高新in中芸」の一環として、高知新聞社が開いた中芸地域の5町村長による討論会「中芸サミット」。待望久しかった土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線の開業を踏まえ、地域振興をどう図っていくのかをはじめ、広域連合の成果や市町村合併などについて、本音を交え自由に語り合ってもらった。5町村長による討議を紙上録音で紹介する。(文中敬称略)
――着工から37年。ごめん・なはり線がやっと開業した。幹線が通じたことをどう受け止めるか。
斉藤 列車の発着地だが、通過点にならないように地域おこしにつながる取り組みをしたい。活性化へのチャンスだ。
桑名 開業までの年輪は重いものがある。鉄道の夢を描いた時代から歳月は流れ、沿線は随分変わったが、東部の活性化を図る起爆剤だと考えている。
有岡 先人の大変な努力があって開業できたわけだが、やはり長かった。鉄道をバネとした地域の浮揚策を練らなければならない者として責任を感じるが、マイナス思考ではなくプラス思考で当たりたい。まずは20の駅をどう生かすかだ。
――北川村、馬路村も大きな効果が見込まれるのではないか。
寺尾 先人が心血を注いで開業できたものを頂き、大きな幸せを感じている。開業初日には「モネの庭マルモッタン」へ約250人の団体客が訪れた。来客に喜んで帰ってもらい、「中芸はえいぜよ」と口コミで評判が広がるようにしたい。
上治 安田や安芸、奈半利の駅が多くのお客さんでにぎわっているのは、うらやましい。ただし、村民が利用するとなると、馬路から安田までの間と、高知市で列車を降りた後、車が必要になる。課題もあるが、利用を呼び掛けたい。
一過性ではなく
――ごめん・なはり線の収支は初年度から赤字が予想されている。健全経営への方策は。
桑名 一番大事なのは、地域の皆さんに利用され愛されるマイレールにすること。一過性に終わらせずに、交流人口を呼び込める町づくり、地域づくりが課題だ。
有岡 「結いの里」といわれる中芸地域のつながりを生かして、恵まれた自然を売り出していく。高知県も東西の軸ができたので、土佐くろしお鉄道にも協力してもらって宿毛からの便を増やしてはどうだろう。
寺尾 職員の出張はすべて鉄道利用に切り替えて、出張費は切符で支給するよう総務課長に言った。高知市内で使うための自転車を高知駅に置くことも検討して、小さいことでも積み上げる。われわれの町、村が利用することも大事だが、来てもらって初めて黒字にできる。中芸地域で手を携える必要がある。
上治 奈半利駅にレストランができるなど、鉄道によって雇用の場が広がった。そんな波及効果にも目を向けたい。馬路村では農協への視察団が増えている。行政には、そういう人々やイベント参加のため村を訪れる人に交通手段を提供することができる。1度乗った人がもう1度乗りたくなるように土佐くろしお鉄道にも努力をお願いしたい。最初から赤字だと言うと、暗くなる。
斉藤 波及効果は産業にも及ぶ。売店を訪れた乗客に野菜や魚などを売り込む機会も増える。そんなことを通じて住民が「頑張らんといかん」と前向きになる効果も期待している。
唯一の県道
――交通基盤で言えば、鉄道の次は道路整備が課題になる。14年度中には地域高規格道路・北川奈半利道路の一部が開通するが、国の予算は道路整備への配分が厳しくなっている。
寺尾 北川村の場合は近年、落石で道路走行中に2人が命を落としている。道路整備への取り組みは進めなければならない。鉄道は奈半利までで止まったが、道路は安芸へ、阿南へと延ばしていきたい。費用対効果もあろうが、北川村も日本の一部だ。その住民が都市並みの便利さ、文化的生活を求めることが何で不都合か。常々感じる。
斉藤 道路は当然、必要だ。国道55号が土砂崩れで遮断された時、人の流れや物流面で影響が大きかった。
有岡 地方分権の時代だが、道路を整備しないことには市町村行政はできない。高規格道路は国の責任でネットワーク化してもらいたい。高速道で南国―高松間が約1時間なのに、南国―中芸間は約1時間半。県道安田―東洋線など主要地方道の整備も必要だ。地域振興に道路の効果は大きい。
桑名 過疎化の原因の一つが道路整備の遅れだ。道路が不便では産業の活性化が図れない。
上治 県道安田―東洋線は住民にとっては生活道だ。一番の問題は土砂崩れで通行止めになれば、救急車が入って来られないこと。費用対効果と言うが、道路を利用する人数でなく、地域の人がどれだけ利用するかだろう。防災、福祉を進める上でも道路は大切だ。村内に1社だけあった誘致企業が撤退した理由の一つが道路の不備だった。高規格道路は国道55号以外にもう1路線という話だが、馬路村が一つしかない県道を改良してほしいというのが、なぜ悪いのか。
厳しい園芸農業
――中芸地域は人口減少が続き、高齢化も進んでいる。若年層の定着が大きな課題だ。基幹の農林水産業をはじめ、産業振興にどう取り組むか。
上治 大事なことは自分たちの地域にある資源、財産をうまく使うことだ。馬路村農協はユズを集めて加工し、情報発信して売っている。ユズ製品の売上高は27億円まで伸びたが、従事者はまだ林業の方が多い。川上は切るだけ、川下は加工するだけという時代は終わった。村の木材をどう情報発信して売るかに取り組んでいるところだ。
桑名 農産物の価格が低迷しているが、生産者の経費は減らず、収入は激減している。魅力がなくなり後継者も少なくなった。上ノ岡工業団地への企業誘致も厳しい。目指すのは文化、福祉、教育など、住民が生活する上で幸せを感じるように環境を整えること。鉄道によって高知市への通勤も可能になる。そこも視野に入れて住環境を整備すべきだと考えている。
有岡 基幹の農業も厳しく、地域経済の行き詰まりは何ともならない。有機肥料や無農薬などで園芸産品の付加価値を高めようと、研究し模索しているが、苦労が続いている。北大野工業団地を食品工業団地と位置付けて、企業を誘致しようと走り回っているが、なかなか難しい。
斉藤 施設園芸で、減農薬や無農薬栽培の特産品をつくるようなことをしないと、市場に受け入れられなくなるという話はする。ほ場整備にも取り組んでいるが、農業の先行きが見えないので、後継者がいない生産者もある。都会を離れて来る人に遊休農地を提供する観光農業も考えている。
売る努力を
寺尾 産業振興は一番頭が痛い問題だ。中部と北部はユズ、南部は園芸と露地野菜と位置付けているが、一つ歯車が狂えばがたがたと崩れる。農協合併の後、本所から情報が入るのが遅くなった面もある。村森林組合には30代、40代もいる。木材価格低迷で仕事が少なくなってきたが、合間に農業を手伝えるように法人化しないか、と話している。
上治 つくるだけなら簡単だ。生産だけでなく、売るための努力をしてはどうか。行政も努力する必要がある。農協と一緒に販売に取り組み、木材もトラックに積んで全国を回るくらいやってみてはどうか。売るのは大変なことだ。都市の消費者はすごい。農協に苦情の電話が入って、女性職員が泣きながら応対するほどだ。
――若者の定着という点では、中芸高校の定員割れも深刻だ。
桑名 かつて、中芸高校の設立に情熱を燃やしたのは地元の青年だった。鉄道と同じで、地元の人間が愛さないことには。
上治 ほかと同じではなく、中芸高へ行きたくなるような学校づくり、特色、魅力だ。室戸高は野球部に力を入れているからなのか、馬路からも行っている。
――中芸広域連合が10年7月に発足してちょうど4年になるが、この間の歩みの総括を。
有岡 率直に言って政策決定に時間がかかる。
斉藤 まだまだ課題はあるが、デイサービス事業など一定の成果は出たのではないか。
寺尾 やはり時間がかかると感じるが、中芸介護公社ができたのは大きな成果、収穫だ。
上治 将来合併しなくて済むようにと広域連合を設立した経緯はあるが、うまくいけば産業振興にも取り組むことができるのではないか。
桑名 時間がかかるということだが、それは5町村が合意する前のことだ。合意した事業はスムーズにいっている。合意前に各市町村で思惑があるからではないか。住民に質の高いサービスを提供するという意味ではよくやっているのではないかと思う。
住民の幸せ
――市町村合併について決断する時期が迫っているが。
斉藤 2市6町村の農協の合併で「土佐あき農協」が発足してから、農協に地域の声が届きにくくなったとも聞く。安芸広域市町村圏での協議も当然していくが、生活圏を考えると、中芸でという方向が妥当ではないか。
桑名 地方交付税の配分は年々厳しくなっている。財政の健全度を表す経常収支比率が100%を超えれば、独自では何もできなくなり、小さい町村はもたなくなる。住民には町の財政構造を知らさなければならないので、今資料を作らせている。安芸市を含めた合併も考えなければならなくなる。
有岡 安田町の場合は約32億円の一般会計予算に対して、税収は5―6%。将来をみてもやっていけるものではなく、自治を執行していく上では財政基盤を確立しないと、住民を幸せにはできない。どの方法が一番いいか探らなければならない。
寺尾 村内を説明に回って一巡したが、住民の財政問題への関心は低い。傾向としては合併は中芸がいいなあ、というところだろうが、中芸5町村の人口は計1万2000―1万3000人。これでは合併した後、再度合併する必要が出てくる。
上治 合併するとは言い切れないが、財政のことで言えば独自で生き残るのは難しい。国も「市町村の自主性に任す」と言わずに、痛みを分かち合って、責任を持ってほしい。
――長時間、ありがとうございました。
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