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82歳で化粧品セールス 「田野のおかあ」杉藤さん

82歳の今も車を運転、化粧品セールスに励む元気な女性がいる。安芸郡田野町立町の杉藤妙さん。「『田野のおかあ』と呼んでくれるお客さんもおられて。人生今が旬」と目を輝かせる。
神戸市生まれの杉藤さんは、兵庫県警に勤務する父親が病気で倒れ、小学校5年生のとき父親の故郷の田野町へ戻ってきた。弟らの学費を稼ぐため、杉藤さんは小学校を卒業すると働き始めた。
「今だから言えるのですが」と話すのが、母親から絶えず受けたせっかん。つねられたり、たたかれたりは毎日のこと。母親のせっかんはやまず、働きに出てもどうしても引っ込み思案になる。
あるとき、お手伝いで入った民家で茶わんを割ってしまった。半分に割れた茶わんにご飯を乗せ、台所の隅っこで震えながら食べていた。
「そしたらその家のご主人が『かわいそうに』と新しい茶わんをくれたんです。ほかの職場でもいじめられたのですが、優しくされたのは初めてで。そのご主人と出会って働くうち、少しずつ明るくなりました」
29歳で田野町の写真店に嫁入り。新聞配達や商品のリヤカー運搬などをしながら子どもを育て、昭和37年、41歳のときに化粧品のセールスを始めた。
「神戸にいたころ近くに髪結いさんがあって、子ども心にあこがれてて、ずっと美容関係の仕事がしたくてねえ」
営業範囲を広げようと運転免許を取ったのは56歳のとき。南国市や高知市へも通って回り、得意客も増えていった。
「家族ぐるみで付き合ってくださる一家もいて、『おふくろみたいな人じゃ』って言うてくれる人もいるんです。私も生意気に『子どもはたたかれませんよ』って子育ての指導をしたり。バイオリンを教えてくださったお客さんもいます」
減ったとはいえ、得意客は今も約50軒。毎日身だしなみとメークを整えて、軽乗用車でセールスに出る。この日も「一人暮らしだけど全然寂しくないんですよ」と朗らかに家を出た。
【写真】「化粧品のお得意さんに習ったんです」と杉藤さん。趣味はバイオリンやマンドリンの演奏(田野町の自宅)
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