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「室戸市は屁(へ)をかまされたようなもんやね」
市民が苦笑する。
ごめん・なはり線(阿佐西線)は奈半利駅から、阿佐海岸鉄道(阿佐東線、徳島県海部町―安芸郡東洋町の八・五キロ)は甲浦駅から、列車がそれぞれ室戸に尻を向けて走り去っていく。その汽笛が、交通過疎が叫ばれて久しい芸東地域をあざ笑うように聞こえるのも無理はない。
高知、徳島両県や周辺自治体の出資する第三セクターが四年に開業した阿佐東線。毎年四千万―七千万円の赤字を出している。開業から五年間は、損益額の四割について国庫から手当てされたが、八年度で打ち切られた。現在は徳島県がそれを負担している。
人の乗らない鉄道は、燃料と一緒に経営安定基金を食いつぶしながら走り続けている。「あと七、八年もつやろか」(阿佐東線関係者)。開業時に約五億七千万円あった基金残高は十三年度末で三億四千万円にまで減った。
沿線人口の減少で、乗客増が望めない中、基金が底を突くことは路線の存廃問題に直結する。「乗って残す」を具現できず、あえぐ十歳年上の“東の兄”。営業距離、沿線人口などの違いこそあれ、「うり二つ」の“西の弟”がいま、出発しようとしている。
「『乗って残そう』は机上の空論じゃないの。大丈夫?」―「百年の悲願」と言われた循環鉄道。結ばれることを待っていた“東の兄”が、“西の弟”に声も絶え絶えに語りかけているようだ。
マイカー族の視線を時刻表に向けさせ「乗らせて残す」ことがいかに困難であるかを、兄が反面教師になって示しているとも言える。
開業日「知らない」
室戸市西端の羽根町。奈半利駅には、最も近い民家からでも八キロ弱、車で十分ほどかかる。「開業日知ってますか」「ズバリ、乗りますか」と町内を訪ね歩いた。「七月一日」「乗る」という答えが七割。ただ、正確には「一回は乗る」という声がほぼ100%だ。「高架からの景色を一度見てみたい」という多くの声の中には「阿佐線の開通を見ずに亡くなった人に知らせたい。冥土(めいど)の土産に乗ってみます」というお年寄りも。
車で約三十分かかる室戸市中心部に至っては、開業日を知らない人、乗らないと断言する人が半数に。乗らない理由は「停留所が多いバスの方が便利」「古い高架は崩れそうで怖い」などさまざまで「汽車が走ると言われて嫁に来たのに、室戸まで来ないんじゃあねえ」と、交通過疎の極みを嘆く女性もいた。
ただ、ある室戸市の観光関係者は言う。「ごめん・なはり線ができたから『どうなる』ではなく、『どうする』という姿勢が大事」。交通空白地を嘆くのではなく、ごめん・なはり線の開業で県東部に注がれる視線を、その先にある室戸市、東洋町にまで届かせる努力の必要性を強調する。
「乗る」という面のメリットは考えにくい芸東地域。が、奈半利駅がにぎわえば芸東へ人を送り出す原動力になると考える人も少なくない。
ごめん・なはり線の汽笛は、嘆きではない。室戸、東洋町に向かってお客を連れてくる列車の力強い息吹かもしれない。
【写真】「循環」の夢破れ、行き止まりのままの甲浦駅(東洋町甲浦)
(平成14年6月23日付朝刊掲載)
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