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「土電バス安芸線の運賃、最大32%値下げ」―土佐電鉄の決定は、土佐くろしお鉄道のごめん・なはり線開通祝賀ムードに冷や水を浴びせかけた。
安芸線は高知―安芸間の国道55号(三六・七キロ)を平日で二十五往復している。年間延べ約八十万人が利用する土電の“ドル箱路線”だが、競合するなはり線の開業後は、一気に赤字転落する恐れが強い。
実際、土佐くろしお鉄道の宿毛線が開業した九年、バス通学の生徒がどっと列車に乗り換えたため、地元バスが大打撃を受けた。「今回何も手を打たなければ、安芸線は億単位の減収になる」と、土電営業課の尾神孝幸課長(42)が、イチかバチかの大幅ディスカウントに打って出た背景を話す。
値下げによりバス運賃は軒並み、なはり線とほぼ同額になった。「安くて、速くて、時間が正確」――土佐くろしお鉄道がアピールしてきたセールスポイントの一角が崩れたわけだ。
「利用者は料金だけで交通機関を選ぶわけではないし、列車のメリットはまだ多い。(バス運賃値下げで)社内にいい意味の緊張感がみなぎっている。自信を失うことなく、乗客獲得の努力を続けたい」
土佐くろしお鉄道の岡村毅郎社長(67)は前向きに話すのだが…。
同社はなはり線の運賃収入のうち、少なくとも四分の一はバスから流れて来る通学生徒の定期券収入を見込んでいた。しかし、バス運賃値下げが決まった今、列車へどれだけ乗客が流れるか、まるで読めない。
安芸市から南国市内にバス通学している高校生の母親らは言う。
「学校が駅のすぐ近くで喜んでいたのに、遅刻しないためにはバスの時間より早起きしないといけない」「バスの方が停留所が多いし、高かった運賃を下げてくれるんなら、今まで通りバス通学ですね」
土佐くろしお鉄道の年間百四十五万人という乗客予測に、狂いが生じるのは必至だ。
少ないパイ
バス利用者にとって大幅値下げは朗報。列車が走ることで公共交通機関の選択肢も広がる。双方が競い合いサービス向上に努めることも歓迎だ。ただ、喜んでばかりはいられないことがある。
土電バス安芸線は「値下げしても四割程度の乗客減少は覚悟の上」(同社自動車部)で、減収は確実。仮に赤字になっても路線を維持する場合、国のバス運行対策費補助金を受けねばならない。ただ、赤字額によっては国、県だけでなく、路線のある地元自治体も補助金を出す必要がある。
沿線市町村はなはり線の赤字対策で今後、十七億円もの基金を準備しなければならないだけに、「この上、安芸線に補助を出すのはかなり難しい。一方で、『バスでないと不便』という住民も必ずいる。赤字になったからといって、安芸線をすぐ廃止するわけにはいかないだろうし…」と、安芸市の担当職員は心配する。
「土電」と「土佐くろ」のサバイバル競争は、人口減が続く本県で赤字に苦しむ公共交通機関同士が、少ないパイを奪い合う構図。ごめん・なはり線の前途は、早くも風雲急を告げてきた。
【写真】ごめん・なはり線の試乗会を楽しむ親子ら。バスか鉄道か、住民が乗りたいのはどっち?(安芸市内)
(平成14年6月18日付朝刊掲載)
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