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数日前、この連載の取材班に同僚記者がやって来た。彼はこんなことを言った。
〈今、競馬組合が県と高知市に払っている競馬場使用料など5億円を凍結する案が浮上している。それは一般財源の投入と同じであり、行財政ルールからみて全く妥当ではない。問題の先送りは許されないのであって、県と高知市は破たん処理こそ急ぐべきだ〉
「行財政ルールって、なに?」
取材班の1人が疑問を口にした。
同僚記者が答える。
「公営ギャンブルは収益事業です。赤字になって公的資金を入れるとは本末転倒のルール違反でしょう。もともと高知競馬は、『黒字の見通しが立たなければ廃止』という再建計画だったはずです」
先の1人が反論する。
「行財政ルールとは行政が勝手に付けた理屈じゃないか。大事なのは雇用であって、そこを無視して議論を展開するのは誤りだと思う。800人が働いている場を無くして、破たん処理費を払う。彼らから税金は入らない、経済波及効果は消える。それでいいの? 例えば企業誘致の際に県は多大な予算を使う。そうせざるを得ないほど、雇用の創出は難しい課題じゃないか」
同僚記者も、引かない。
「高知競馬は増収の見込みが薄いんです。毎年約3億7000万円の使用料を凍結し、約1億3000万円の金利も払い続けますか。世論の納得が得られますか。しょせんギャンブルくらいの認識しか、県民にはない」
今度は別の取材班メンバーが反論した。
「今、競馬場で800人の生身の人間が生きているんです。血が通っているんです。それを、ばっさりつぶせと言えるんですか? 雇用効果をもっと考えてもいいんじゃないですか」
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高知競馬場の厩舎(きゅうしゃ)団地には馬550頭、厩務員や調教師、騎手らが住み、あるいは通って来る。
ある厩務員は馬小屋に住んでいる。飼い葉や寝わらは地元の農家から買い付ける。年中獣医がやって来る。馬の足に鉄を打つ装蹄(そうてい)師がいて、競馬予想紙の記者がいて、馬主たちがいる。
こうした雇用をいかに評価するか。雇用の広がりをどう見るか。廃止した場合と継続した場合の経済的な影響を比較すれば、どうなのか。
付け加えるなら、県市の責任をどうとらえるか、という問題が残っている。
巨額の累積赤字は、県や高知市が借金を現場に負わせ、膨らませ続けた。その経営側が被害者面をして、「競馬でしか稼げない人たちのために、税金を入れてあげますか、どうしますか」と問うている。
仕事師たちは被害者と加害者の逆転に、打ちひしがれ、怒っている。というより、彼らはずっと前から怒っていたのだった。われわれが、今まで気付かなかっただけだ。
雇用や経済効果を高く評価すべきか。何より行財政ルールが大事か――。
論争の結論は、もちろん出ない。2時間言い合った後、「今度、座談会でもしましょう」と同僚記者は去っていった。
【写真】第1コーナーを回る。存廃の論議が巻き起こっている(高知競馬場)
(平成14年12月26日付夕刊掲載)
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