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「自立と協働」の未来を
「自然の中で暮らしたかった。ここにはいろいろなものがある」
満員電車に揺られる都会の通勤地獄や企業社会のストレスを拒み、大阪府出身の遠藤智さん(26)は関西大を卒業後、高岡郡梼原町にIターンし、梼原林産組合「ゆうりん」の研修生となった。
「就職や生き方に対する考え方はどんどん変化している。自分のような考えを持つ後輩は確実に増えていますよ」
遠藤さんは今、地域の人の温かさを実感しながら暮らしている。
物差しを変えれば
国立社会保障・人口問題研究所は平成九年に発表した「都道府県の将来推計人口」で、本県の総人口を「二〇二五(平成三十七)年、六十八万一千人に減少する」とはじいた。
今年三月に出された最新の推計は「二〇三〇年、七十万六千人」。死亡数が出生数を上回る「自然減」をU・Iターンによる「社会増」が補い、微減にとどまった十二年の国勢調査の結果を反映し、人口減のスピードが緩んだ格好だ。
とはいえ、高齢化率は二〇三〇年に33.7%に上昇するとされ、「高齢化」と「少子化」が一層顕在化。中山間地域の過疎化と県中央部への人口集中が加速することも想像に難くない。
集落の危機、自治体の危機、社会保障の危機、労働力の危機…。人口減といびつな人口構造がもたらす危機は、数え上げればきりがない。
だが、Iターンした遠藤さんが若者の志向の変化を指摘するように、人々が求めるものは「都会」「大企業」「高学歴・高収入」などの経済一辺倒の価値観から、「自然への回帰」「生活の質」「心の豊かさ」などへと変化してきている。
超高齢社会のマイナスイメージも、元気な高齢者を「現役」と再定義するだけで、印象は随分違ってくるはずだ。
旧来の物差しを変えることを念頭に、私たちはこのシリーズで、地域を丸ごと売り出す馬路村の取り組みや、晩婚化・未婚化、少子化の周辺を探ってきた。第五部では、地域で支え合う人々の姿をリポートした。
行政に寄り掛かるのではなく、一人よがりでなく、ないものねだりでなく――。さまざまな課題に直面しながらも「自立」と「協働」を目指して懸命に生きようとする人々の姿があった。
そうした姿から学べることは、一人ひとりが地域の“宝物”を見つけ、「支え合って生きる」ことにこそ、豊かな地域社会を構築する鍵があるということだろう。
十二年前、本県は全国初の「自然減」に転じた。以来、人口減の先頭を走り続けている。二十一世紀を「人口減の世紀」の視点だけでとらえれば、私たちの将来像は暗いものでしかない。
しかし、「人権の世紀」「環境の世紀」と位置付け、郷土に残された「人」「心」「自然」のぬくもりを見直したとき、バラ色とはいえないまでも、桜のようにほんのりと色づいた、すこやかな未来が広がるのではないだろうか。
政治部・岡林直裕
松井久美
夕刊特報部・又川晃世
=シリーズ・完=
【写真】年代を超え、立場を超えて広がる笑顔。一人ひとりが大切にされる地域社会を構築したい(春野町の「うららか保育園」)
(平成14年6月6日付朝刊掲載)
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