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個人と社会のはざま
「生きる上での選択肢はいっぱいある。その中で、『女性の生きる道として、結婚、出産が正義や』と押し付けられたら、反発するのは当たり前ですよ」
高知市の会社員、孝美さん(36)=仮名=は、言葉を一つ一つ選びながら話す。四年制大学を卒業、入社十四年目、独身、一人暮らし。総務・企画畑を中心に配置換えも何度か経験したが、仕事の確かさで上司の信頼は厚い。
有り体に言えば、バリバリのキャリアウーマン。しかし、「生きる上での選択肢」を「仕事」と決めているわけではない。「結婚しない」と決めてもいない。いい感じの男性もいるが、その人と結婚するかもしれないし、しないかもしれない。ただ、結婚、出産が唯一の選択肢だと限定する考え方に共感できないのだ。
こうした思いは女性に限ったことでもない。
公務員の和也さん(31)=仮名=は「いずれ結婚するとは思うが、まだしたくない」。その理由を「飲みに行ったり、趣味の映画に時間を費やしたり、給料を思い通りに使ったり。そんな自由を侵されたくない」と言い切る。
「結婚して初めて一人前と言われることもあるが、仕事はある程度こなしているし、未婚を理由に、自分を半人前とは思わない」
孝美さんや和也さんの言葉に、実は私も同感している。三十歳を過ぎて、結婚したい気もするが、「まだ決断できない。もう少し自由でいたい」。「そんなことを言いよったら、一生、一人のままぞ」と言われれば、「それはそれで、仕方がないかな」と思う。
強制できない
価値観の多様化や女性の社会進出を背景に、結婚は必需品ではなく、選択の対象になったといわれる。戸籍をはじめ、さまざまな社会制度の土台となってきた「大人になったら結婚し、子どもを産み育てるのが当たり前だ」という認識が、必ずしも常識ではなくなりつつある。
人生に多様な選択肢があることは、ある意味、豊かさの証明かもしれない。しかし、「子どもを持つ前提は結婚」という意識が強い現状では、結婚を選択しない人が増えた場合、少子化は容易に加速する。急激な人口減や高齢化の進展へとつながっていく。
結婚は個から家庭という集合体への移行で、社会の存続に大きくかかわっている。だが、難儀なことに、結婚するもしないも、個人の自由な選択にゆだねられている。強制できない。
県生活女性課の橋田寿人課長は「そこに、行政が政策として踏み込みにくい難しさがある」と指摘する。
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「今の若い人はまあ、気長いというか、ぜいたくな話よね」
若者を対象にした出会いづくりの事業などを展開してきた県連合婦人会の田中敏子会長からは、厳しい声とため息が返ってきた。
「ほっておけば、地域の存亡にかかわる。子どもは地域、社会の活力。家庭は子どもを産み育てる基盤であり、地域を支える基盤でもある。家庭の基礎となる結婚から考えないと、過疎地域の明日はない」
社会全体を見渡す視点からいえば、確かにそれが現実だ。個人と地域社会と、そのはざまにある結婚――。未婚化、晩婚化のただ中にある人たちの思いを追いながら、“幸せの基盤”を考えたい。
(政治部・松井久美)
【写真】光差す日も、波立つ日もある。二人はどんな帆を張ってこぎ出すのだろうか
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