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68万人社会に挑む
 第2部「ユズの村の戦略」(10)

18 山へのこだわり
続き

森の里復興へ三セク

 「うちの村はあまりにも国有林依存型できたがやないろうか。このままでえいがやろうか…」

「後継者が育つ持続可能な森の仕事のシステムづくりを」と話す上治村長(安芸郡馬路村)  安芸郡馬路村の上治堂司(かみじ・たかし)村長は、平成十年四月の村長就任以来、自問自答を繰り返してきた。

 村長になってわずか三カ月後に魚梁瀬営林署の廃止が発表され、昨年には村が誘致した県外の企業が撤退した。誘致企業だけでも二十人の働く場が村内から消えた。

 「国策や外部の企業に頼っちょったら、中山間地域が永続的に雇用の場を確保できん。過疎を食い止めるため、自前で産業を興す工夫ができんろうか」

 取り組まなければならない課題は見えていた。「村の面積の九七%を占める森林資源にどう手を付け、それを生かすシステムを自前でつくれるか」

 ただそれを具体化するには、国有林に頼ってきた林家の意識を変え、独自の販売戦略も構築しなければならない。村としてもよほどの覚悟がいる。

 ユズ手本に直販

 幸いなことに同村では、村農協のユズ加工品が生産、加工、販売を一元化する方式で成長を続け、就業人口も拡大している。

 「どこを探してもないようなえい手本がうちにはある。ユズの栽培面積は村全体で一−二%やないか。それがあれだけ頑張りゆう。かけかもしれんが、九七%の『林(りん)』が農協と同じ気持ちで取り組めば、活路が開けるんやないか」

 しかも山の仕事には伐採、製材、土木と大勢の村民が携わっている。「ユズだけやのうて『林』も一緒に元気になって、森で生活ができだしたら、定住人口が確保できる」

 魚梁瀬営林署が統廃合されるという村の存亡にかかわる危機感の中で、上治村長は腹をくくった。

 馬路のユズ方式は、「原料供給産地から、消費者に商品を直接届けるメーカーになる」ことから始まった。これを森の仕事に当てはめるとどうなるか。

 まず自前で木を切り、加工(製材)する。ここまでは森林組合がやってきた。それに馬路村ならではの付加価値を付け、消費者に販売する。しかもこれらを一元的に管理し、情報発信する必要がある。

 「これまでの林業の考え方は、赤字が出たら人件費を削る。けんど、それやと働く魅力がのうなる。I・Uターンの若い人が帰ってきて後継者になる持続可能な仕組みもいる」

 とすれば、どうやって経費を削減するか。「実際は山で木が売れゆうわけじゃない。川下の市場へトラックで運んで売れゆう。そこには輸送費やマージンがかかってくる。山元が徹底して営業マンになり、直接木を売ることができたら、そのコストが浮く」

 村が昨年策定した「馬路村まるごと販売術」の試算によると、山元に貯木場を設置した場合、運搬費や市場経費などが削減でき、木材一立方メートル当たり四千七百十円が節減できる。

 上治村長は自戒の念を込めて続ける。「けんど、木が売れんことには、森は循環していかん。天然木ばっかりにこだわりよったらいかんし、山元は林業不況の原因を国策や外材輸入のせいにして、木の良さをアピールする努力が絶対に足らんかった」

 ユズを手本に直販方式を導入し、「森の里」の復興を図る。そのために「村にあるドングリから建築材まで」すべてを手がける「馬路の森の株式会社」をつくる。方針は固まった。

 そして昨年、村が筆頭株主になり、森林組合や農協などの関係機関、個人の出資を仰ぎ、第三セクター「エコアス馬路村」が発足した。林業後継者の育成を図る一方、今春には加工部門と啓発事業を中心とする取り組みが始動する。

 【写真】「後継者が育つ持続可能な森の仕事のシステムづくりを」と話す上治村長(安芸郡馬路村)


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