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山村留学に望み託す
平成十年七月、林野庁は「全国に二百二十九ある営林署を九十八の森林管理署に統廃合する」との再編案を発表した。これに伴い安芸郡馬路村の魚梁瀬営林署は、十一年に安芸市の安芸森林管理署に統合され、十六年三月までに廃止されることになった。
日本三大美林の一つ「天然魚梁瀬杉」を抱える魚梁瀬営林署の収支決算は黒字続き。元年度には約二十億円、九年度も約三億六千万円の黒字を計上するなど、国有林野事業の赤字解消に貢献してきた全国屈指の優良営林署だった。
十年当時の同村の人口は一千二百七十九人(五百二十五世帯)。うち魚梁瀬には二百九十三人が住み、営林署員と家族(計九十五人)が三割を占めていた。
また魚梁瀬の就労者人口百三十八人のうち基幹作業員を含めた営林署員は四十七人。建設、製材など関連業種を含めると、就労者の六割以上が営林署とかかわりを持っていた。
営林署が廃止されれば、村の基幹産業である林業への影響はもとより、雇用や経済などあらゆる面で打撃を受ける。再編案の発表後、営林署の存続や代替え組織を永続的に残すことなどを求める運動が、村内で次々に展開された。
魚梁瀬では十二団体・組織による「国有林対策委員会」が発足。八月には上治堂司村長を会長とする「営林署再編問題対策村民会議」を結成し、村を挙げた要望・抗議活動を行った。
この時運動に参加した村民の多くが、村の命運を国の判断にゆだねざるを得ない現状に、無力感や悔しさを痛いほど感じていた。
「何で安芸が残って、魚梁瀬がのうなるがな。うちの村はこれからどうやって生きていったらえいがやろう…」。言葉にならない複雑な思いが交錯していた。
校舎を全面改築
一方、九年から始めた魚梁瀬の保・小・中の「山の学校留学制度」は徐々に成果を挙げ、小学校校舎の全面改築計画も水面下で進んでいた。
「魚梁瀬が持ちこたえるためには、山村留学に望みを託し、交流・定住人口を確保するしかない。校舎を建て替えれば、留学の目玉になり、制度も定着する」。同制度推進委員会の山崎雅朗会長(65)ら魚梁瀬住民の期待は膨らんだ。
ところが、再編案の発表で「営林署が廃止されるのに、学校を建て替えても仕方がない」との声が村内で広がり始めた。
山村留学制度に暗雲が立ちこめる中、十年八月、村議会は臨時会を開いた。議論の末、約三億円の魚梁瀬小の校舎改築議案は可決され、十一年三月、新校舎が完成。村営住宅六戸も魚梁瀬に建設され、受け入れ態勢が整った。
十二年一月から十二月までに十組三十六人が留学。制度導入時から数えると十七家族六十六人が一度は魚梁瀬に転入してきたことになる。
留学は、中学を卒業するまでの契約制度を取っているが、大半の家族が「一時的ではなく、できれば永住したい」との希望を持っている。
営林署統廃合の波紋は確かに大きい。留学制度の取り組みもその抜本的な解決にはならないかもしれない。だが同制度は、これまで地域の特殊性から国策に頼らざるを得なかった魚梁瀬の住民が、地域の将来を考え自ら動きだした「成果」だと考えられないか。
だからこそ経済的には恵まれているとは言えない山村に、移住する人が後を絶たないのではないか。村外から訪れる人に魚梁瀬はどう映っているのか。留学家族の元を訪ねてみた。
【写真】魚梁瀬小学校では児童16人のうち5人が山村留学制度を利用し、家族と一緒に地域で暮らしている(安芸郡馬路村魚梁瀬)
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